🌟 はじめに:なぜ「やる気のある人」ほど不満を抱えるのか?
ボランティア活動や地域イベント、職場のプロジェクトなどで、運営側(責任者)は効率や目標達成を最優先します。
一方で、熱心なスタッフ(メンバー)ほど、「もっとこうしたい」「あの人も巻き込みたい」といった熱意ある提案をぶつけてくることがあります。
しかし、その提案が組織の効率や安全の原則とぶつかると、責任者は「却下」せざるを得ません。
その時、参加者は「自分の意見が無視された」「頑張りが認められない」と感じ、不満が生まれてしまいます。
本記事では、この対立を解消し、「ああ言えばこう言う」状態に陥らず、参加者の不満を「納得」と「協力」に変えるための責任者のためのコミュニケーション術を解説します。
⚡️ 多くの組織で多発する「対立の事例」
ここで、熱意ある参加者の提案が、運営側の現実的な制約と衝突し、不満が生じる典型的な事例を見てみましょう。
事例 1:地域清掃ボランティアにおける「参加資格」の提案
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参加者(提案者)の提案と動機:
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提案:「体力のない高齢者や、幼い子どもも短時間だけ活動に参加できるように、休憩用の椅子と、専用のゴミ拾いルートを設定するべきだ。」
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動機:「活動をみんなで楽しみたい(和気藹々)」「地域住民全員を包摂したい」という温かい思い。
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責任者(運営側)の懸念と却下の理由:
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懸念:高齢者の安全確保のための監視員の配置、専用ルート設定による清掃効率の低下、休憩場所の確保の手間。
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理由:活動の主目的が「効率的な美化」であり、「安全性の担保」という原則と、提案に伴う「資源(人員)の追加投入」という現実的な制約が衝突するため。
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事例 2:新製品のプロモーションイベントにおける「アイデア採用」の提案
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参加者(メンバー)の提案と動機:
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提案:「もっとお客様が交流できるような体験型のブースを設けて、親しみやすい雰囲気を作るべきだ。」
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動機:「成功のために貢献したい」「自分のユニークなアイデアを活かしたい」という自己実現への欲求。
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責任者(運営側)の懸念と却下の理由:
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懸念:イベント当日の時間厳守と、限られた予算内でのブース設営、体験ブースによる顧客導線の混乱。
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理由:主目的が「製品の認知度向上と販売促進」であり、決められた「予算と時間」という制約の中で、「効果を最大化する」という原則を優先するため。
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こうした事例で生じる不満は、提案の論理的な是非ではなく、「なぜ自分の熱意が認められないのか」という感情的な部分に根差しています。
🎯 重要な原則:動機の「優先順位」を明確にする
参加者の不満を解消する第一歩は、活動の目的と優先順位を明確にし、責任者がその「調整役」を担っていることを理解してもらうことです。
イベントやプロジェクトの活動には、通常、複数の動機や目標が絡み合っています。
参加者の不満の多くは、彼らが重視する動機(特に第3位の「交流」)が、責任者が重視する基準(第1位の「効率・安全」)と対立することで生じます。
責任者は、これらの優先順位を明確に示したうえで、コミュニケーションを進める必要があります。
🗣️ ステップ別:円満に決定を伝えるコミュニケーション術
熱心なメンバーからの提案に対し、責任者が行うべきコミュニケーションは以下の3つのステップで構成されます。
ステップ 1:提案の裏にある「動機」に共感し、承認する
まず、提案の内容ではなく、提案に至った熱意や動機を認めます。
これにより、参加者は「自分自身は認められている」と感じ、冷静に話を聞く姿勢が生まれます。
✅ NG例:「それは効率が悪くなるので今回はできません。」
⭕ OK例:「○○さんの『みんなで楽しく活動したい』という温かいお気持ち、心から感謝します。この活動に、より多くの人を巻き込みたいという熱意は本当に素晴らしいです。」
ステップ 2:原則に基づき「責任者の判断」を論理的に説明する
共感した後、感情論ではなく、活動の「主目的(第1位)」と「責任者の役割」という上位の原則に立ち返って判断を説明します。
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効率性・安全性の観点:
「この場所での活動は、短時間で最大の効果を上げる(第1位の達成)ことを目的に設計されています。ご提案の『椅子に座る参加』は、援助のための人員や労力を増やし、かえって効率が低下し、安全上のリスクも高まるため、今回は見送らざるを得ません。」
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責任と権限の観点(議論の終結):
「私たちは様々な意見を聞いた上で、最終的な調整役として、このやり方が会全体の平和とミッション達成に最も貢献すると判断しました。個人的な意見は誰でも持てますが、一度決定が出たことについては、組織の取り決めを尊重し協力していくことが、活動の成功につながります。」
ステップ 3:代替案を示し、「他の貢献の場」へ誘導する
提案が叶わなかったメンバーが「居場所を失った」と感じないよう、彼らの熱意やスキルが活かせる別の貢献の機会を具体的に示します。
特に「交流」を重視するメンバーには、そのニーズが満たせる場を提供します。
💡 具体的な代替案と伝え方の例
【ポイント】
代替案を提示する際は、単に「これもやってください」ではなく、「あなたの〇〇という資質(熱意、気配り、経験)が、この役割にこそ必要である」と、個人の特性と役割を結びつけて伝えることが重要です。
これにより、却下された不満から、「組織にとって必要な存在である」というポジティブな自己肯定感へと気持ちが切り替わります。
🔑 まとめ:納得は「論理」と「配慮」のバランスで生まれる
参加者の不満を解消する鍵は、「あなたの気持ち(配慮)は受け止めたが、組織のルール(論理)により決定は変えられない」という明確なメッセージを、誠意をもって伝えることです。
私自身、活動の現場で熱意あるメンバーから「ああ言えばこう言う」と反論され、頭を抱えることが少なくありませんでした。
しかし、この「優先順位の明確化」と「動機への配慮」を意識してからは、状況が劇的に変わりました。
感情的な議論に巻き込まれず、常に活動の「主目的」という原点に立ち返って説明し、熱意を別の健全な貢献の場へ導くことで、参加者からの協力と納得感を得ることができ、組織運営は円満に進むようになりました。
責任者として最も難しいのは、「感情的に配慮しつつ、論理的に線を引くこと」ですが、今回ご紹介した3つのステップを実践することで、あなたのチーム運営も必ず改善されるはずです。
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