賃貸マンションのハウスクリーニング後、入居者の方から「清掃が行き届いていない」と連絡が入りました。
メールには、
「部屋には満足しています」
「経年劣化は気にしていません」
という配慮ある言葉も添えられていましたが、床やサッシ、ドアの隙間など、拭けば落ちるような汚れが気になったとのことでした。
34年以上この仕事をしている私には、「これくらいなら十分きれい」と思える仕上がりでした。
しかし、現地へ向かう途中で考え方を変えました。
「今日は自分の仕事が裁かれる場ではない。入居者の方が安心して新生活を始められるよう、最後の仕上げをする場なんだ。」
そう考えると、不思議と気持ちが楽になりました。
実際にお会いした入居者の方は、とても温厚な女性でした。
確かに細かなところまで見られる方でしたが、無理な要求をする方ではありませんでした。
現地で一緒に確認すると、入居者の方が気にされていたのは、意外にも目立つ場所ではありませんでした。
例えば、お風呂のドアにある通気口。
正面から見るときれいに見えますが、通気口の奥には、カリカリに乾いたホコリや汚れが少し残っていました。
また、洗面所へ続くドアの下部にある空気の通り道(ガラリ)も同じです。
立ったままでは見えませんが、しゃがんで下から見上げると、ホコリや小さなゴミが確認できました。
これらは普段の生活では気にならない方も多いでしょう。
しかし、新居に入居したばかりの方にとっては、「ハウスクリーニング済み」と聞いているだけに、目に入ると気になってしまうのも理解できます。
私は30年以上ハウスクリーニングに携わっていますが、通常の仕上がりとしては十分合格点だと感じました。
それでも、少し手を入れればさらに気持ちよく住んでいただけることも事実です。
水回りでは、汚れではなく腐食を汚れだと思われている箇所もあり、説明すると納得してくださいました。
一方で、少し手を加えればもっと気持ちよく使っていただける場所もありました。
その場で手直しをして、最後は笑顔で終えることができました。
今回改めて感じたのは、
清掃の合格ラインと、入居者が安心して暮らせるラインは、必ずしも同じではないということです。
プロとして品質に自信を持つことは大切です。
でも、それ以上に大切なのは、「この部屋で気持ちよく新生活を始めていただきたい」という気持ちなのかもしれません。
クレーム対応は、誰でも身構えてしまいます。
しかし、「責められる場」ではなく、「安心していただくための最後のサービス」と考えると、見える景色が少し変わりました。
この経験を、これからの仕事にも生かしていきたいと思います。

コメント