「壁紙を張り替えたのに、ハウスクリーニングもしたのに、タバコのヤニ臭が全然消えない…」
長年ハウスクリーニングに携わる私も、この難題に何度も直面しました。
目に見えるヤニをすべて除去しても、なぜか湿気や温度の変化で蘇るあの不快な臭い…。
30年の経験を持つプロである私が、徹底的に調査した結果、最重要の原因として特定したのが、9割の人が見落としてしまう「浴室換気扇の内部に固着したヤニ」です。
もちろん、臭いの原因は換気扇だけとは限りません。
本記事では、私の実体験に基づく換気扇の具体的な洗浄手順に加え、コンセント裏や換気ダクトなど、「それでも臭いが消えない」場合の3つの盲点と対策をすべて公開します。
このプロの知見で、あなたのタバコ臭の悩みを終わらせましょう。
プロの体験談で判明した真犯人
ヤニ除去の苦闘と「まだ臭いが残る」という現実
私は依頼を受け、ヤニがこびりついたマンションの一室の消臭作業に取り掛かりました。通常行うヤニ除去の工程はすべて実施しました。
- ヤニで茶色になったクロス(壁紙)はすべて剥がし、新しいものに張り替える前の状態。
- キッチン、台所のドア、窓ガラスなど、目に見える建具のヤニ汚れは徹底的に除去。
- 風呂場や洗濯板の排水管も漂白剤で洗浄し、下水臭の可能性も排除。
当初は消臭剤をたっぷり噴霧した直後は臭いが消えたように思えました。
しかし数日後、オーナー様から「まだタバコの臭いがする」とのご連絡。
「見えるヤニ」をすべて取ったはずなのに、臭いはどこから上がってくるのか?
私は途方に暮れました。
特に、浴室周辺の臭いが濃いように感じたのです。
真犯人の特定:浴室換気扇の内部
私は、配管ではないと確信し、もう一度浴室を徹底的に調べました。
浴室の天井にある換気扇。その白いカバーの表面はきれいに洗浄済みでした。
しかし、私は念のためドライバーを取り出し、カバーを外してみました。
その瞬間、長年の勘が当たりました。
カバーの裏側は、ヤニでベッタリと茶色く固着していました。そして、その奥の換気扇のファンやケーシング(換気扇本体の内部)も、ヤニが分厚い層になってこびりついていたのです。
こんなふうに浴室には換気扇がついています。

白いカバーは4本のネジでついていてドライバーで外せるのですが、消臭目的だったのでこのまま見える部分だけのヤニを除去。
でももしかしてこの中のヤニが匂っているのか、と思い、ドライバーで外してみました。

実は問題の部屋では写真が撮れなかったので、別の部屋の写真掲載です。
この程度の状態ならまだましで、ほとんど匂いはないです。
ところが、問題の部屋ではこのカバーの裏は茶色いヤニが全面固着していて結構ヤニ臭かったです。
それを洗って綺麗にするとどうなるでしょうか?

すっかりきれいになりました。
カバーだけでなく中身はこんな感じでした。

前述しましたようにこの部屋は撮影用で撮りましたので、まだましなのですが、問題の部屋は赤丸の部分が茶色そのものでした。
でもそれをちゃんと洗うとこんな感じになります。

これでカバーも中身もヤニが完全にとれ、カバーをはめて、1時間ほど経ちましたが風呂場のヤニは完全に消えました。
犯人は目に見えなかった風呂場の換気扇内に固着したヤニでした。
これは、喫煙者が浴室で換気扇を回しながらタバコを吸った際、ヤニを含んだ空気が換気扇の熱や湿気で内部に凝縮し、結晶化したものです。
この換気扇内部の固着ヤニこそが、湿度が上がったり空気が動いたりするたびに臭いを放ち続ける「隠れた真犯人」だったのです。
【プロ直伝】換気扇の具体的洗浄手順
私の現場では、この換気扇内部を徹底洗浄したところ、風呂場周辺のタバコ臭は完全に消えました。ここでは、プロが効果を実感した洗浄方法をお伝えします。
- 安全確保: 必ずブレーカーを落とすか、スイッチを切って電源を遮断してください。
- 分解: ドライバーで換気扇カバー、そして可能であれば**ファン(プロペラやシロッコファン)**を慎重に取り外します。
- つけ置き洗浄: 取り外した部品は、ヤニに強いアルカリ性の洗剤(例:業務用マジックリン、セスキ炭酸ソーダ液など)を溶かした熱めのお湯に1時間ほどつけ置きます。
- ブラッシング: つけ置き後、柔らかいブラシでヤニをこすり落とします。換気扇のケーシング内部(外せない部分)は、洗剤をスプレーし、濡らした雑巾で丁寧に拭き上げてください。
- 乾燥と組み立て: 部品をよくすすいで乾燥させ、元の通りに組み立てて完了です。
それでも臭いが消えない!見落とし厳禁の「3つの盲点」
浴室換気扇を洗浄してもまだ臭いが残る場合、残念ながらヤニはさらに深く、構造材や配管の隙間にまで染み込んでいます。
これは、私が長年の経験で「盲点」だと感じてきた場所です。
盲点①:電気・配管設備内部の石膏ボード
- 疑うべき場所:
- コンセントやスイッチのカバー裏、ボックス内部
- 照明器具(特に熱を持つもの)の内部やソケット周辺
- 理由と対策: ヤニを含んだ空気は、壁のわずかな隙間(コンセントの穴など)を通って壁の内部に入り込み、石膏ボードに染み込みます。表面のクロスを張り替えても、ボードの芯に残ったヤニが臭いの元となります。対策はボードのヤニ抜き作業、または器具の交換が必要です。
盲点②:換気ダクトと外壁の排気口
- 疑うべき場所:
- 浴室換気扇から外部へ伸びるダクトの内部全体
- 外壁にある排気口のカバー
- 理由と対策: 換気扇のファンを越えた先のダクトの壁面にヤニが層となり、臭いのパイプと化していることがあります。排気口のカバー(外側)もヤニで汚れている場合は、外気を取り込む際に臭いを室内に戻します。ダクト内部は個人での清掃が困難なため、専門業者によるダクト洗浄が必要です。
盲点③:建材の芯まで染み込んだ「構造臭」
- 疑うべき場所:
- クロスの下の石膏ボード、あるいは柱や間柱などの木材
- 床下のコンクリート躯体
- 理由と対策: 喫煙期間が長いほど、ヤニ臭は構造材の内部まで深く染み込み、素材そのものの臭いとなります。これはもはや表面の清掃では除去できません。費用はかかりますが、この段階ではオゾン脱臭機による徹底脱臭や、臭いを封じ込める**特殊な消臭コーティング(封じ込め工法)**が最終的な選択肢となります。
終わりに:消臭の現実的な着地点
タバコの臭いを新築時のような「完全な無臭」にするのは、大規模な改装工事(構造材の総入れ替え)をしない限り、非常に困難なのが現実です。
しかし、今回の体験で判明した「浴室換気扇の徹底洗浄」と、上記「3つの盲点」を潰していく作業は、臭いを「匂いに敏感でない方なら気にならないレベル」まで下げる上で極めて有効です。
私の現場では、最終的に完全無臭には至りませんでしたが、芳香剤を置くことで、オーナー様からは消臭作業として評価をいただけました。
もしあなたがタバコ臭で悩んでいるなら、まずは最も効果的で費用対効果が高い「浴室換気扇の徹底的な分解洗浄」から試してみてください。
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