清掃のプロが語る『納得の着地点』—透明ボンドとワックスの現実 「やり切ったはずなのに…」その一本の電話から始まる

清掃のプロが語る『納得の着地点』—透明ボンドとワックスの現実

「やり切ったはずなのに…」その一本の電話から始まる

完璧に洗って、乾かして、這いつくばって確認した。

——よし、これで行ける。

そう確信して塗ったワックス。なのに翌日、

「シミがあるから、手直ししてもらえますか?」

清掃に関わる人なら、一度は経験したことがある“あの感覚”。
胸の奥がストンと落ちる、あの絶望です。

しかも原因は、内装工事で残った透明なボンド跡

「清掃で取れるだろ?」というベテランの厳しい一言と、
一日分の日当という限られた予算。

その板挟みの中で、
私たちはどこに“プロとしての答え”を置くべきなのか。

今回は、私自身の実体験をもとに、
現場での「納得」の着地点についてお話しします。


その日は、まさに“真剣勝負”だった

貼り替えたばかりの、真新しいフローリング。
その質感を守るため、
お湯と中性洗剤だけを使い、何度も丁寧に拭き上げました。

腰を折り、顔を床に近づけ、
照明を反射させながら隅々まで確認する。

「よし、綺麗になった」

そう確信して、ワックスを塗り終えました。

ところが翌日、担当者からの連絡。

「ワックスにシミがあるので、手直しを…」

現場に戻り、緑のテープが貼られた箇所を見た瞬間、
私はこう思いました。

「ああ……やはり出てしまったか」


ワックスで初めて“可視化”される、現場の記憶

浮かび上がっていたのは、
洗浄時には透明で見えなかった施工時のボンド跡

ワックスを塗ったことで初めて姿を現す、
言わば床に残された現場の記憶です。

そこに合流したベテラン担当者からの一言。

「乾かせば見えるはずだ。清掃で取れるだろ?」

正直、胸が少し疼きました。

私たちは内装屋さんと揉めたいわけではありません。
同じ現場を完成させる“仲間”だと思っています。

けれど——

一日の日当、限られた時間。
その中で、見えないボンドをすべて探し出すのは、
現実的に不可能な領域でもあります。


私が選んだのは「戦わない説明」だった

私は、状況をそのまま、穏やかに伝えました。

このボンドは非常に厄介で、
ワックスを媒介にしないと見えないことがあります。
這いつくばって確認しましたが、
これが今回の洗浄でできる限界でした。

これ以上手を入れすぎると、
かえって床を汚したり、傷めたりするリスクがあります。

すると、横で聞いていた新人担当者さんが、
スッと場を収めてくれました。

「この現場、内装作業のときから少し荒れていましたよね。
養生も十分じゃなかったし……
これは清掃の落ち度ではなく、内装側のボンドですね」

彼は、

  • どこまで確認したか
  • どんな手順を踏んだか
  • どこが“限界”なのか

そのプロセスを理解してくれたのです。

そして「これは清掃としての完成形だ」と、
納得してくれました。


現場で本当に大切なのは「誰が悪いか」ではない

結局、現場で大切なのは
責任の押し付け合いではありません。

  • お互いの専門領域を尊重すること
  • どこで折り合いをつけるか
  • 双方が納得できる“着地点”を探すこと

清掃は魔法ではありません。
内装屋さんのミスを、
すべて無償でリカバリーする仕事でもありません。

けれど——

誠実に説明し、
「そこまでやってくれたなら」と
相手が納得してくれた瞬間。

この仕事の本当の価値が生まれるのだと思います。


現場で悩むあなたへ

もし今、
やり場のない指摘に一人で悩んでいる人がいたら、
伝えたいことがあります。

無理に戦う必要はありません。

  • 自分がやった工程を信じること
  • 事実を淡々と、誠実に伝えること

それが、
自分のプライドを守り、信頼関係を深める一番の近道です。


実務で使える「納得を生む」3つのメッセージ例

① 作業開始前|リスクを予見して“伏線”を張る

件名:本日のフローリング清掃について

お世話になっております。本日の清掃作業に入っております。
床の状態を確認したところ、内装工事の際のボンドや糊が、
薄く残っている箇所が散見されます。

洗浄工程で可能な限り除去いたしますが、
こうした施工汚れは、ワックス塗布後の乾燥過程で
初めて白く浮き出てくる特性がございます。

素材を傷めない範囲での仕上げとなりますこと、
あらかじめ共有させていただきます。


② 作業完了時|写真に映らない不備を“記録”に残す

件名:清掃完了報告と共有事項

本日の作業が完了いたしました。
這いつくばっての目視確認と洗浄を徹底いたしましたが、
一部、内装時のボンドが床材の凹凸に
入り込んでいる箇所がございます。

無理に擦り取ると新品の床材を傷めるため、
現状を「清掃による最善の仕上がり」としております。


③ 指摘を受けた時|否定せず“境界線”を示す

件名:ご指摘箇所の確認について

ご指摘ありがとうございます。現場を再確認いたしました。

該当箇所は、洗浄時には透明で判別できない
内装ボンドがワックスに反応したものです。

これ以上の除去は「清掃」ではなく
「補修(リペア)」の領域となり、
床材の質感を損なう恐れがございます。

清掃としては今回が完成形となりますが、
今後の養生等について内装業者様と
ご相談いただければ幸いです。


最後に

現場で積み上げた“見えない努力”は、
言葉にしなければ伝わりません。

だからこそ、
説明できるプロであること。

それが、
長く信頼される清掃業者の条件なのだと、
私は思っています。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。

ワックス後に浮かぶ「謎のシミ」の正体――透明ボンドと清掃の限界点
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