「塗り終えたら1時間は入室禁止」
これはワックス作業をする人間なら誰でも知っている鉄則です。
塗り終わった床は、見た目以上にデリケート。
乾く前に歩けば足跡が残り、何かを落とせば跡になる。
だから一度塗ったら、あとは信じて待つしかありません。
今日、その鉄則の重みを改めて思い知る出来事がありました。
本当は塗りたくなかった
今日の現場のフローリング。
正直なところ、最初は
「今回はワックスなしでもいいかな」
と思いました。
ところが光を当てながらよく観察すると、表面が少し削れている部分や、保護層が弱っている箇所が見えてきます。
このまま引き渡すのは微妙。
結局、
「よし、塗ろう」
と腹を決めました。
ワックス作業の敵はホコリと髪の毛
ワックスは塗る技術よりも、実は塗る前の準備の方が大切です。
床に残った髪の毛1本。
小さなホコリ1粒。
それだけで仕上がりに影響します。
私はバスタオルを床に敷き、その上に乗って部屋中を滑走。
養生テープを片手に、髪の毛やホコリを片っ端から回収していきます。
この時間はほぼ戦闘モードです。
最高の出来だった
ゴミを除去し終えたら本番。
ワックスを適量流し、モップを回転させながら均一に伸ばしていく。
多すぎてもダメ。
少なすぎてもダメ。
そしてモップ跡も残してはいけない。
一歩ずつ後退しながら塗り進め、最後は玄関へ到達。
振り返って床を見る。
かなり良い。
我ながら納得できる出来栄えでした。
もちろん、どんなに完璧に見えても、光の角度を変えれば微細な付着物は見つかります。
ワックス作業に100点満点はありません。
それでも今日はかなり良い仕上がりでした。
悲劇はトイレで起きた
ところが問題はここからです。
この現場。
なぜかブレーカーがトイレの中にありました。
照明を戻すため、私は急いでトイレへ。
薄暗い空間でブレーカーを上げる。
パチン。
任務完了。
そう思った瞬間でした。
額から何かが流れ落ちる感覚。
嫌な予感がしました。
次の瞬間。
ボタッ。
落ちました。
汗です。
しかも場所が最悪。
塗り終えたばかりのワックスの上でした。
心臓が止まりそうになった
ワックスは水分に弱い。
汗の一滴でも影響を受けます。
床を見ると、落下地点だけがジワッと変化している。
「ああああ……」
思わず声が出そうになりました。
ほんの数秒前まで完璧だったのです。
それが自分の汗で台無しになる。
こんな悲しい事故があるでしょうか。
プロの応急処置
慌ててタオルを取り出します。
でも擦るのは厳禁。
擦ればさらに悪化します。
そっと。
本当にそっと。
ポン。
ポン。
ポン。
祈るような気持ちで水分だけを吸い取ります。
しばらく観察。
……うん。
よく見れば分かる。
でも言われなければ気付かない。
そのレベルまでは回復しました。
なんとか致命傷は回避です。
ワックスは触れば触るほど悪くなる
今回の反省はひとつ。
塗り終えた後は、本当に何もしないこと。
途中で気になることが起きても、基本は触らない。
下手に手を加えれば加えるほど、状況が悪化することがあります。
ワックス作業は意外にも「我慢の仕事」なのです。
最後に
完全に乾いてしまえば、後から修正できることもあります。
だから必要以上に神経質になる必要はありません。
もちろん気になる部分はあります。
でも、自分が気にしているほど他人は見ていない。
現場経験を重ねるほど、その事実を実感します。
もし本当に何か問題があれば、その時にまた直しに来ればいい。
そう考えられるくらいの余裕が、結果的には一番良い仕上がりにつながるのかもしれません。
ただ一つだけ言えることがあります。
次からは――
ブレーカーの位置を最初に確認します。

コメント