1. はじめに:今日の現場とミッション
ハウスクリーニングの仕事体験で訪れたのは、空室のワンルームマンションでした。
今回の現場のフローリングは、珍しい濃紺色。一見、非常に綺麗で汚れも目立ちません。しかし、室内に差し込む光が当たる部分をよく見ると、キャスターや家具を引きずったことによる細かなワックス層の傷が目立っていました。
賃貸物件では、次の入居者様へ気持ちよく引き渡すために、こうした視覚的なマイナス要素は極力排除する必要があります。そのため、オーナー様と相談し、「傷を目立たなくするため、全体を剥離してワックスを塗り直す」というミッションが決定しました。
濃色のフローリングは、少しでも剥離ムラがあるとそれが光の加減で露骨にわかってしまうため、今日の作業は徹底的な均一性が求められました。
2. 剥離作業ステップ①:薬剤の塗布と浸透
ワックスを剥がす最初のステップは、もちろん剥離剤の塗布です。
⚠️ 注意!剥離剤選びのリアル
ここで改めて、現場で学んだ重要な知識をお伝えします。私たちが使用したのは、もちろん業務用の剥離剤ですが、水で希釈して慎重に使います。
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市販の剥離剤は濃度が低く、何層にも塗り重ねられた古いワックスを完全に剥がすにはパワー不足で、ムラになりやすいです。
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業務用の剥離剤は非常に強力ですが、素人が使うと床材への影響や、回収時のムラのリスクが極めて高くなります。
この事からも、完全に剥離したい場合はプロに頼むのが一番です。
薬剤の浸透を促す塗布方法
現場では、希釈した剥離剤をスポンジに含ませ、床面に塗布していきます。一度に広範囲に塗ってしまうと、乾燥して剥離効果が落ちるため、1メートル四方の面積を区切りながら進めました。
ポイントは、薬剤を塗った後に水分をコントロールすること。
床に剥離剤を塗布した後、気持ち程度水をチャポチャポとかけて、ゴム手袋をした手で優しく全体にまぶすように広げました。これは、剥離剤が乾燥するのを遅らせ、ワックス層の奥までしっかり浸透させるための地味ですが重要な一手間です。この水分によって、ワックスがふやけて剥がれやすい状態になります。
3. 剥離作業ステップ②:物理的に削り取る!〜スクレーパーの役割〜
薬剤を浸透させること約10分。ワックス層が浮き上がってきたら、いよいよ物理的に剥がしにかかります。ここで登場するのが、刃が金属製のスクレーパーです。
力を入れずワックス層にアタック
スクレーパーは「削り取る」というより、薬剤で柔らかくなったワックス層の表面を「軽くアタックする」イメージで使用しました。力を入れすぎると、フローリングの木材自体に傷が入ってしまうため、スクレーパーの刃を寝かせ気味の角度で当て、ワックスを引っ掛けるように優しく全体に当てていきます。この作業で、古いワックスがボロボロと剥がれ始めます。
🚨 失敗から学んだ、道具の材質の重要性
ここで、私は少しでも作業効率を上げようと、幅の狭い金属製スクレーパーから持ち替えを試みました。試したのは、内装屋さんが使うプラスチック製の壁紙ならしツールです。幅が広いので一気に作業が進むだろうと考えましたが、結果は…全く効果なし。
金属に比べ、プラスチックは硬度もエッジの鋭さも不足しています。柔らかくなったワックス層に対し、プラスチックではただ滑ってしまうだけで、剥がす力が働きませんでした。
「Wax剥離にプラスチック製品は弱い」。
この日、道具の材質と剥離の原理について、身をもって学ぶことができた大きな教訓です。
4. 剥離作業ステップ③:仕上げと汚水回収〜金タワシとバスタオルの重要性〜
スクレーパーで大まかにワックス層を剥がした後も、床にはまだワックスの残留物や剥離剤の成分が残っています。
この残渣を完全に除去することが、剥離ムラをなくし、新しいワックスの定着を良くするための最重要工程です。
水を含んだ金タワシで最終研磨
ここで登場するのが、水を含ませた金タワシです。
金タワシは、その硬い繊維が、床材自体を傷つけることなく、残ったワックスのカスを効果的に掻き出す能力に優れています。
使用する際のポイントは、力加減です。
強く押し付けたり、何度も同じ場所を往復させたりすると床を傷つけかねません。
剥離剤の成分を水で薄めながら、軽く回転させるように優しく擦るのがコツです。
これにより、スクレーパーでは処理しきれなかった頑固な残渣が浮き上がってきます。
汚水回収は時間との勝負!
そして、この剥離作業の成否を分けるのが、汚水の回収スピードです。
剥離剤の成分を含んだ汚水が床面に長時間残ってしまうと、それが乾燥したときにムラや変色の原因になります。
汚水を残さないことが、冒頭でお話しした「ムラムラになる」ことを防ぐ最大の防御策です。
現場では、この汚水をバスタオルで一気に吸い取るという、効率的かつ迅速な方法を採りました。
バスタオルは吸水性が高いため、素早く広範囲の汚水を回収できる現場ならではのテクニックです。
汚水を回収した後も安心はできません。
床に残ったわずかな薬剤を完全に除去するため、綺麗な水で二度、三度と丁寧に水拭きを繰り返しました。
この徹底的なリンス作業を行うことで、テカテカと光っていた古いワックスの層が完全に消え、本来の濃紺の床が現れました。
5. まとめ:剥離作業を終えての感想と学び
集中力と体力を使った剥離作業を終え、正直なところ結構疲れました。
特に濃紺色のフローリングは、光の反射で少しのムラやテカリも強調されるため、回収作業には神経を使いました。
しかし、その分、傷が目立っていた床面が均一に整い、輝きがリセットされたのを見たときの達成感は格別です。
今回の体験を通して、ハウスクリーニングのプロの仕事には、単なる「掃除」とは違う、化学的な知識と物理的なテクニックの組み合わせが必要だと痛感しました。
今回の最大の教訓
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剥離剤選びのリアル: 市販品はパワー不足、業務用は技術が要る。安易なDIYはムラのリスクが高い。
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道具の材質の重要性: 剥離という力仕事には、力を効率よく伝える**金属製の道具(スクレーパー)**が不可欠。プラスチック製のツールでは通用しないということを身をもって学びました。
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汚水回収のスピード: 剥離の成功は、薬剤をいかに早く、そして徹底的に床から除去できるかにかかっています。
もし、ご自宅のフローリングの傷にお悩みの方がいれば、無理せず、適切な道具と知識を持ったプロに依頼することをおすすめします。
それが、床を美しく長持ちさせるための最も確実な方法です。
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