ハウスクリーニングの仕事をしていると、避けては通れないのが「やり直し」の要請です。
先日、私もそんな現場に直面しました。
居酒屋のリノベーション清掃後、30代の女性オーナーから「納得がいかない」と連絡が入ったのです。
現場に伺って目にしたのは、プロの目から見ても手付かずの状態でした。
現場のリアル(不満の正体)
こちらが、実際にオーナーさんが不満を感じられた箇所の写真です。

窓のゴムパッキンには黒ずみが溜まり、網入りガラスの隅まで埃が入り込んでいます。

レンジフードはステンレスの輝きが失われ、工事の粉塵と油が混じった膜で曇っています。
これを見た瞬間、正直に言えば「うわっ、気が重いな……」という思いが頭をよぎりました。
事情を聞けば、工期ギリギリまで内装作業が続き、前回の担当者は限られた時間の中で「できる範囲」を尽くして引き渡したとのこと。
でも、これから商売を始めるオーナーさんからすれば、汚いものは汚い。
その言い分は、プロとして真摯に受け止めなければならない正論でした。
言葉の定義を変える:「再施行」という誇り
私は、こうした場面で「クレーム処理」や「手直し」という言葉を使わないことに決めています。
社内では一貫して**「再施行」**と呼んでいます。
「手直し」という言葉には、どうしても誰かのミスを責めるような、ネガティブなニュアンスがつきまといます。
それでは現場に向かう足取りが重くなるばかりか、最初に作業した仲間を否定することにもなりかねません。
「仕事は誠心誠意果たしたが、相手の要望により、改めて施行する」
そう定義を変えるだけで、誰一人として不快な思いをせず、フラットな気持ちで現場に立つことができます。
私たちはミスを隠しに行くのではなく、プロの技術でその空間を「本来あるべき姿」へ完成させに行くのです。
精神衛生を保つための「戦略」
オープン前日の13:00〜16:00という限られた時間。
オーナーさんは細かな要求をされそうな雰囲気もありましたが、私はビビることも、安請け合いをすることもありませんでした。
「レンジフードだけで1時間はかかります。
ワックスの塗布と乾燥を含めれば、20分や30分では終われません」
プロとして必要な時間を正直に伝え、期待値をコントロールする。
そして何より、私には頼もしい「サポートの仲間」が一人います。
二人がかりで一気に仕上げる姿を見せることで、オーナーさんの不安を信頼に変えていく。これは、ある種の「攻略ミッション」なのです。
最高のご褒美:温泉と食事会
そして、この気が進まない現場を乗り切るための、私にとっての「最強の切り札」。 それは、その日の晩に予定されている**「社内の温泉と食事会」**です。
「16時にピカピカにして、一秒でも早く温泉に浸かる!」
そう心に決めるだけで、現場は「嫌な場所」から「温泉を100倍気持ちよくするためのスパイス」に変わります。
仲間と「あと少しで温泉ですね」と声を掛け合いながら、懸念事項をすべてクリアにしてから乾杯する。
アンカー(最終走者)としてゴールテープを切った後のビールは、きっと格別なはずです。
最後に:同じ現場を走る仲間へ
最後に、日々現場で汗を流す仲間に伝えたいことがあります。
今回の私のように、それがたとえ同僚のバトンミスであっても、あるいは自分自身のミスから生じたことであっても、どうか必要以上に気を落とさないでください。
人間が動く現場に、完璧なんてありません。大切なのは、起きてしまったことをどう捉え、どう完結させるか。
「手直し」という言葉で自分を責めるのではなく、「再施行」というプロの仕事で上書きする。
そして、終わった後は頑張った自分を温泉や美味しい食事で思い切り労ってあげましょう。
心を整えることも、汚れを落とすのと同じくらい、私たちにとって大切な仕事なのですから。
スポンサーリンク


コメント