「すぐ終わらせて」と言う顧客に、プロの作業時間「3時間」を納得させる交渉術

ハウスクリーニングの仕事をしていると、時として「板挟み」の現場に立たされることがあります。

先日も、居酒屋のリノベーション清掃後に、オーナー様から「手直し」の要請があり伺ってきました。

現場にいたのは、これから開店を控えた30代の女性オーナー。

「レンジフードが汚い」

「窓に汚れがある」

「床にワックスが塗られていない」

ご指摘はもっともでしたが、現場の状況は「16時には帰りたいけど、それまでに終わるの?」という強い時間的プレッシャーがある状態でした。

ここで焦って「できる範囲でやります」と引き受けてしまうのは、プロとして最も避けるべき選択です。

結果的に中途半端な仕上がりになり、さらなる不信感を生むからです。

今回は、そんな厳しい状況下で、いかにして「後日、3時間の作業時間」を正当に確保したか。私が現場で実践した交渉のポイントを共有します。


1. 「できない」ではなく「物理的な根拠」をぶつける

お客様が「20〜30分でパパッとやってよ」と仰る背景には、掃除の工程が見えていないという事実があります。

ここで感情的に反論せず、事実を淡々と、かつ専門的に伝えます。

私はこう伝えました。 「レンジフードの油汚れを落とすだけで1時間はかかります。ワックスは塗布だけでなく、しっかり乾燥させなければ足跡がついて台無しになります。20分や30分では、物理的に不可能なのです」

ポイントは、「やりたくない」のではなく「物理法則として無理である」と伝えること。

そうすることで、お客様の矛先が自分ではなく「作業の性質」に向き、「そうでしょうね」という納得感を引き出すことができました。

2. 「満足」を安売りせず、「最善」を約束する

手直しの現場で一番怖いのは、「絶対に綺麗にします」と言い切ってしまうことです。

素材の劣化や染み込み具合によっては、どれだけ時間をかけても落ちない汚れがあるからです。

私はあえて「完璧」という言葉を使いませんでした。

「プロの資材と工程を尽くして、現状からどこまで改善できるか、その限界まで責任を持って向き合います」

「満足させる」という相手の主観をゴールにするのではなく、「プロとしてのプロセスを完遂する」という事実を約束する。

これが、相手の過度な期待をコントロールしつつ、信頼を勝ち取るための誠実な線引きです。

3. 「時間の確保」を「お客様の利益」に変換する

3時間という時間は、職人のためではなく「お客様が今後、店を快適に運営するため」に必要であることを強調しました。

「今、ここで中途半端な処置をすれば、オープン後に余計なお手間をかけることになります。

今後長く綺麗に使っていただくための3時間を、どこかでいただけませんか?」

相手の「忙しい」という事情を否定せず、その忙しい未来を助けるための「今」であることを提案する。これにより、一方的なお願いではなく、共通のゴール(=お店を最高の状態にすること)を目指すパートナーとしての交渉が可能になります。


まとめ:プロの誠実さは「断る勇気」から始まる

今回の件は、結果として年末年始を挟んだ10日後に、改めて3時間の枠をいただくことで決着しました。

お客様の「早くして」という言葉は、裏を返せば「期待の裏返し」です。

その焦りに飲み込まれず、「質の低い仕事をして、二度とお客様をガッカリさせないこと」

それこそが、手直しの現場で最も守るべきプロの誇りではないでしょうか。

同じような状況で悩んでいる方の参考になれば幸いです。

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