普通の人は気にならない。でも、気になる人は気になる――現場品質の難しさ

はじめに

 

ハウスクリーニングの仕事をしていると、ときどき考えさせられることがあります。

「どこまでやれば完了なのか?」

フローリングに残る微細な内装のり。
ワックスを塗ると浮き出てくる跡。
ドア枠やブレーカーに付着した接着剤。
なかなか落ちないスイッチの水垢。

もちろん気付けば除去しますし、改善できる方法があれば試します。

しかし現場には、どれだけ作業しても100%には届かない部分もあります。

先日も、クリーニング完了後の部屋で「カビの臭いがする」と連絡がありました。雇用者と一緒に現地確認をしましたが、私たちには臭いは感じられません。それでも追加対応として消臭作業を行いました。

その時に改めて考えたのです。

品質を高める努力は大切。
でも、その品質に終わりはあるのだろうか。

今日は、長年ハウスクリーニングの現場に立ってきた私が感じる「現場品質の難しさ」について書いてみたいと思います。

同じ部屋を見ても、人によって見えるものが違う

現場担当者は複数います。

その中には、私なら気にならないレベルでも見逃さない人がいます。

フローリングの内装のり。
ドア枠のわずかな付着物。
ブレーカーやエアコン化粧板の小さな汚れ。

言われてみれば確かに残っています。

ただ、普通に部屋を利用する人が気付くかというと、必ずしもそうではありません。

しかし、その人には見えるのです。

そしてそれは決して悪いことではありません。

細かく見る人がいるから品質は向上します。

一方で、現場を担当する側としては「どこまでやるべきか」という問題も生まれます。

完全除去と素材保護の間で

クリーニングの仕事は、ただ汚れを落とせばいいわけではありません。

素材を傷めないことも重要です。

例えば劣化した塗装面。

強い洗剤や硬い道具を使えば汚れは落ちるかもしれません。

しかし、その代わりに塗装が剥がれてしまったら本末転倒です。

現場ではよく、

「これ以上やると危険だな」

というラインに出会います。

その判断もまた、職人の仕事だと思っています。

新しい発見は現場から生まれる

そんな中、最近ひとつ収穫がありました。

内装のりの除去に苦労していた時のことです。

100円ショップで売られている焦げ取りシートと、濡らしたメラミンスポンジを組み合わせてみたところ、意外なほど効果がありました。

正直なところ、半分はダメ元でした。

「これで落ちたら儲けものだな」

そんな気持ちで試したところ、思った以上に反応が良かったのです。

もちろん素材によっては注意が必要ですが、傷を付けずに除去できるケースもありました。

長年やっていても、まだ新しい発見があります。

現場というのは面白いものです。

クレームや手直しの依頼が、結果的に技術向上につながることもあります。

匂いは特に難しい

先日の「カビ臭がする」という案件もそうでした。

現地に到着して、まず玄関で深呼吸。

「どうです?」

「いや、分からないですね……」

雇用者と顔を見合わせました。

それでも依頼者は気になると言います。

こういうケースは実は珍しくありません。

汚れは目で確認できます。

しかし臭いは人によって感じ方が違います。

ある人には気にならなくても、別の人には強く感じることがあります。

だからこそ難しいのです。

見えないものを相手にする仕事は、目に見える汚れ以上に神経を使います。

品質に終わりはない

私は34年以上この仕事を続けています。

それでも今なお、

「もっと良い方法はないか」

「この汚れはどう落とそうか」

と考えています。

品質に終わりはありません。

だからといって、どこまでも作業を続けられるわけでもありません。

時間もあります。
予算もあります。
素材の限界もあります。

その中で最善を尽くす。

おそらくそれがプロの仕事なのだと思います。

普通の人は気にならない。

でも、気になる人は気になる。

その両方を知りながら、今日も現場で最善の仕上がりを目指しています。

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