担当者に分かってもらえない時、何がズレているのか ――現場が噛み合わない本当の理由

「説明しているのに、伝わらない」あの違和感

「これ以上やると下地を傷めます」
「この汚れは、これ以上落ちません」

現場でプロとして、根拠をもって説明しているはずなのに、担当者の表情は晴れない。
そして返ってくるのは、決まってこの一言。

「そこを何とか、もう少し頑張れませんか?」

その瞬間、言葉を失った経験はありませんか。
技術的には正しい。理屈も通っている。
それでも会話は平行線のまま終わってしまう——。

この「伝わらないストレス」、実はあなただけの問題ではありません。
そして、あなたが説明下手なわけでも、相手の理解力が低いわけでもないのです。

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結論:ズレているのは“能力”ではなく“判断軸”

結論から言います。
話が噛み合わない原因は、技術不足でも、説明不足でもありません。

ズレているのは、
「何を基準に判断しているか(判断軸)」
ただそれ一点です。

現場側も担当者側も、どちらも「良かれ」と思って動いています。
ただ、見ているポイントが根本的に違っているだけなのです。


担当者と現場の「判断軸」はどう違うのか

現場を預かるあなたと、会社や顧客を背負う担当者。
それぞれが、何を見て判断しているのかを整理してみましょう。

一言で言うと、
現場は「壊れるかどうか」を見ていて、
担当者は「説明できるかどうか」を見ています。

現場側(プロの視点)

  • 洗剤や道具に反応するか、しないか

  • これ以上やると素材を傷めないか

  • 後日クレームや再施工につながらないか

担当者側(管理の視点)

  • 見た目として綺麗かどうか

  • お客さんや上司に説明できるか

  • 前例・納期・全体の段取りに収まるか

これは「どちらが正しいか」という話ではありません。
そもそも見ている世界(レイヤー)が違う。
まずその事実を認識することが、すべての出発点です。


なぜ、あなたの話は噛み合わなくなるのか

多くの場合、良かれと思ってやっていることが、逆にズレを広げています。

技術の話をしてしまう

担当者は「どうやったか」よりも「どうなったか」を見ています。
薬剤の種類や反応時間を丁寧に説明するほど、相手の意識は離れていきます。

原因を先に言ってしまう

「施工が原因です」と先に言うと、
相手は理解する前に「責任問題」を感じ、防御反応を起こします。

ゴールを共有していない

現場のゴールは「壊さず安全に仕上げる」。
一方、担当者は「新品同様に戻す」ことがゴールだと思っている場合があります。
目的地が違えば、道順の話が合うはずがありません。


ズレを埋めるためにやるべき「3つの翻訳」

担当者に納得してもらうために必要なのは、
あなたの技術を相手の判断軸に翻訳することです。

① 先に「状態」を物理的に見せる

「落ちません」と言う前に、洗浄後の状態を見せます。
部分洗浄後の床、斜めから撮った写真。
言葉より状態。
視覚情報は、どんな説明よりも説得力を持ちます。

② 犯人探しではなく「時系列」で説明する

「誰が悪いか」ではなく、「いつ起きたか」を話します。
「この跡は、〇〇の工程時に付着した可能性が高いです」
事実を淡々と伝えることで、相手の防御反応は和らぎます。

③ リスクを「相手の損得」で言語化する

「壊れます」だけでは足りません。
「ここで続けると、後で補修やクレーム対応が必要になります」
相手が次に説明しやすい言葉でリスクを伝えます。


納得が得られた瞬間、現場は変わる

判断軸が共有された瞬間、現場の空気は一変します。

  • 無理な要求が止まる

  • 「どうすればいい?」という相談に変わる

  • 内装業者や元請との調整を、担当者が主体的に動くようになる

「納得」とは、あなたの技術を認めさせることではありません。
説明可能性を共有することなのです。


それでも、どうしても分かってくれない時は

正直に言えば、どうしても話が通じない相手もいます。

  • 感性の問題

  • 現場を見ようとしない

  • 判断や責任を持たない立場

そんな相手に、無理に分からせようとする必要はありません。
やるべき説明を尽くし、記録を残し、**「分かる形」**を作る。
それだけで、あなたの仕事は果たされています。


まとめ|プロの仕事は「やらない判断」にある

依頼されたことをすべてやることだけが、誠実さではありません。
取り返しのつかない事態になる前に、止める判断をすること。
それもまた、高度な技術です。

その判断を、相手が受け取れる形に翻訳して手渡す。
説明できる状態を作った時点で、
あなたの仕事は、もう半分以上終わっています。

分かってもらえないのは、あなたの技術が足りないからではありません。
ただ、判断軸を翻訳していないだけなのです。

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