「説明しているのに、伝わらない」あの違和感
「これ以上やると下地を傷めます」
「この汚れは、これ以上落ちません」
現場でプロとして、根拠をもって説明しているはずなのに、担当者の表情は晴れない。
そして返ってくるのは、決まってこの一言。
「そこを何とか、もう少し頑張れませんか?」
その瞬間、言葉を失った経験はありませんか。
技術的には正しい。理屈も通っている。
それでも会話は平行線のまま終わってしまう——。
この「伝わらないストレス」、実はあなただけの問題ではありません。
そして、あなたが説明下手なわけでも、相手の理解力が低いわけでもないのです。
▼例えばこういうことがありませんか?
紺色フローリングに付着した内装ボンド|清掃で「これ以上やると壊れる」現場判断ガイド
結論:ズレているのは“能力”ではなく“判断軸”
結論から言います。
話が噛み合わない原因は、技術不足でも、説明不足でもありません。
ズレているのは、
「何を基準に判断しているか(判断軸)」
ただそれ一点です。
現場側も担当者側も、どちらも「良かれ」と思って動いています。
ただ、見ているポイントが根本的に違っているだけなのです。
担当者と現場の「判断軸」はどう違うのか
現場を預かるあなたと、会社や顧客を背負う担当者。
それぞれが、何を見て判断しているのかを整理してみましょう。
一言で言うと、
現場は「壊れるかどうか」を見ていて、
担当者は「説明できるかどうか」を見ています。
現場側(プロの視点)
-
洗剤や道具に反応するか、しないか
-
これ以上やると素材を傷めないか
-
後日クレームや再施工につながらないか
担当者側(管理の視点)
-
見た目として綺麗かどうか
-
お客さんや上司に説明できるか
-
前例・納期・全体の段取りに収まるか
これは「どちらが正しいか」という話ではありません。
そもそも見ている世界(レイヤー)が違う。
まずその事実を認識することが、すべての出発点です。
なぜ、あなたの話は噛み合わなくなるのか
多くの場合、良かれと思ってやっていることが、逆にズレを広げています。
技術の話をしてしまう
担当者は「どうやったか」よりも「どうなったか」を見ています。
薬剤の種類や反応時間を丁寧に説明するほど、相手の意識は離れていきます。
原因を先に言ってしまう
「施工が原因です」と先に言うと、
相手は理解する前に「責任問題」を感じ、防御反応を起こします。
ゴールを共有していない
現場のゴールは「壊さず安全に仕上げる」。
一方、担当者は「新品同様に戻す」ことがゴールだと思っている場合があります。
目的地が違えば、道順の話が合うはずがありません。
ズレを埋めるためにやるべき「3つの翻訳」
担当者に納得してもらうために必要なのは、
あなたの技術を相手の判断軸に翻訳することです。
① 先に「状態」を物理的に見せる
「落ちません」と言う前に、洗浄後の状態を見せます。
部分洗浄後の床、斜めから撮った写真。
言葉より状態。
視覚情報は、どんな説明よりも説得力を持ちます。
② 犯人探しではなく「時系列」で説明する
「誰が悪いか」ではなく、「いつ起きたか」を話します。
「この跡は、〇〇の工程時に付着した可能性が高いです」
事実を淡々と伝えることで、相手の防御反応は和らぎます。
③ リスクを「相手の損得」で言語化する
「壊れます」だけでは足りません。
「ここで続けると、後で補修やクレーム対応が必要になります」
相手が次に説明しやすい言葉でリスクを伝えます。
納得が得られた瞬間、現場は変わる
判断軸が共有された瞬間、現場の空気は一変します。
-
無理な要求が止まる
-
「どうすればいい?」という相談に変わる
-
内装業者や元請との調整を、担当者が主体的に動くようになる
「納得」とは、あなたの技術を認めさせることではありません。
説明可能性を共有することなのです。
それでも、どうしても分かってくれない時は
正直に言えば、どうしても話が通じない相手もいます。
-
感性の問題
-
現場を見ようとしない
-
判断や責任を持たない立場
そんな相手に、無理に分からせようとする必要はありません。
やるべき説明を尽くし、記録を残し、**「分かる形」**を作る。
それだけで、あなたの仕事は果たされています。
まとめ|プロの仕事は「やらない判断」にある
依頼されたことをすべてやることだけが、誠実さではありません。
取り返しのつかない事態になる前に、止める判断をすること。
それもまた、高度な技術です。
その判断を、相手が受け取れる形に翻訳して手渡す。
説明できる状態を作った時点で、
あなたの仕事は、もう半分以上終わっています。
分かってもらえないのは、あなたの技術が足りないからではありません。
ただ、判断軸を翻訳していないだけなのです。
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