「真面目な人ほど事故る現場」 ――なぜ、ちゃんとやる人が危ないのか

「真面目な人ほど事故る現場」――なぜ、ちゃんとやる人が危ないのか

現場で取り返しのつかない大きな事故を起こすのは、案外、手を抜く不真面目な人ではありません。

誰よりも

「なんとかしてあげたい」

「完璧に仕上げたい」

という強い責任感を持った人こそが、実は最も危ない。

今回は、その残酷なまでの背景を書きます。

1. 善意が凶器に変わる「あと一擦り」の罠

想像してみてください。

内装のフローリング張り替えが終わり、現場は新品の輝きに満ちています。

しかし、引き渡し直前のチェックで、光の加減で見える小さな**「ボンドの付着」**を見つけてしまった。

「せっかく張り替えたんだから、完璧な状態で引き渡したい」

「担当者も期待しているし、これくらいはプロとして落としておこう」

そう思って、スクレーパーや溶剤を手に取ります。

「あと少しだけ擦れば落ちるかも」……。

その一歩踏み込んだ**「もう一手」**の瞬間に、事故の芽が潜んでいます。

力を込めた次の瞬間、新品のフローリングの表面まで削り取ってしまう。

血の気が引く感覚。

良かれと思ってやったことが、工事全体を台無しにする「事故」に変わる瞬間です。

2. 結論:事故の正体は“善意の踏み越え”

はっきりとお伝えしますが、真面目な人が事故を起こすのは、技術不足ではありません。

プロとして守るべき**「境界線」を、自分の善意で踏み越えてしまうから**です。

事故は、悪意からではなく、常に「良かれと思って」という純粋な気持ちから生まれます。

3. 真面目な人が冷静な判断を誤る「3つのトリガー」

なぜ、腕のある職人が判断を誤ってしまうのか。そこには3つの心理的トリガーがあります。

  • ① 担当者の期待に応えようとした時 「プロなんだから、これくらい綺麗になるよね?」という無言のプレッシャーに対し、「できません」と言う勇気を持てず、禁じ手に足をかけてしまう。

  • ② 前例を再現しようとした時 「あの現場ではこの溶剤でいけた」「前の素材は耐えられた」という過去の成功体験を過信し、目の前の素材が上げている悲鳴(変色や軟化)を無視してしまう。

  • ③ 説明を諦めた時 「この汚れを追うと傷になる」という論理的な説明には時間がかかります。「面倒だから、パパッと終わらせて驚かせよう」――このショートカットが、最も危険な入口です。

4. 事故は“技術ミス”ではなく“判断ミス”

事故現場を後から振り返ると、意外な事実に気づきます。

  • 手順はマニュアル通りだった

  • 使った薬剤も対象物に適合していた

  • 道具の使い方も熟練していた

つまり、技術は正しかった。間違っていたのは「ここで止める」という判断だけです。 判断が一段階前で崩れると、どんなに高度な技術も、素材を破壊する凶器に変わります。

5. プロが死守すべき「デッドライン」

プロには、絶対に踏み入れてはいけない「一線」があります。特に清掃・内装現場では以下の3つです。

  1. 反応がない時: 薬剤を変えても、時間を置いても変化がないなら、それは「落ちない汚れ」ではなく「素材の一部」です。

  2. 物理破壊が必要な時: 汚れではなく、素材ごと削らなければならないと気づいた時。

  3. 不可逆な工程: 「もし失敗したら、張り替えるしかない」という不安が1%でも過った時。

この線を越えて博打に出た瞬間、あなたはプロではなく、ただの「運任せの作業員」になってしまいます。

まとめ|真面目さは“止める力”に変えろ

本当のプロフェッショナルとは、**「なんでもできる人」ではなく、「どこで止めるべきかを知っている人」**です。

あなたの持つ「真面目さ」や「誠実さ」は、無理に結果を出すためではなく、「これ以上は危険です」と顧客に毅然と告げる勇気に使ってください。

「やらない」という判断を下すことこそ、あなた自身と、顧客の資産を守るための究極の技術です。

プロの仕事とは、完遂することだけではない。 最悪の事態を予測し、踏みとどまる力こそが本物である。

▼ここまで分かると相手が自然にこう変化するのです。

担当者が“分かる人”に変わる瞬間 ――噛み合わなかった現場が、急に動き出す時

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