「命令じゃないのに、一番しんどい英語」 ―― be expected to が静かに人を追い詰める理由

完璧に洗った。
乾燥も確認した。
床に這いつくばって、角度を変えて何度も見た。

「よし。これで大丈夫だ」

そう確信してワックスを塗った翌日、電話が鳴る。

「ここ、シミがあるので手直しお願いします」

清掃の現場に関わる人なら、一度は経験したことがある感覚ではないでしょうか。
怒鳴られたわけでも、命令されたわけでもない。
でも、胸の奥にずっしり残る重さだけは消えない。

実はこの感覚、英語ではとてもよく表されます。
それが be expected to という表現です。

この記事では、
なぜ be expected to が「命令じゃないのに一番しんどい英語」なのかを、
現場のリアルな体験と一緒に整理していきます。


「やれ」とは言われていないのに、逃げられない

英語学習をしていると、こんな3つの表現をよく見かけます。

  • have to

  • be supposed to

  • be expected to

意味だけを見ると、どれも「〜しなければならない」。
でも、疲れ方がまったく違うんです。

3つの表現を「しんどさの種類」で並べると、違いがはっきりします。

表現 圧の正体 しんどさ
have to 明確な義務・ルール はっきりしている
be supposed to 役割・決まりごと 少しモヤっとする
be expected to 期待・空気・前例 静かに重い

be expected to は、
誰かが命令しているわけではありません。

でも

  • 「普通そうでしょ?」

  • 「前はできてましたよね?」

  • 「プロなんだから当然ですよね?」

そんな言葉にならない圧が、背中から押してきます。


無理やりではない、中間の圧(be expected to の感覚)

現場で言われる「シミがあります」は、
命令でも、依頼でもありません。

でも、その裏にはこういう前提があります。

  • プロなんだから

  • 今まで問題なかったから

  • できるはずだから

つまり、

You are expected to do it right.
(きちんとできると“思われている”)

この「思われている」が、逃げ場を消します。


期待の主語は「人」じゃない(be expected to の正体)

be expected to の厄介なところは、
誰が期待しているのか分からない点です。

上司?
客?
会社?
それとも「今までの自分」?

多くの場合、主語はこれです。

  • 現場の空気

  • 過去の実績

  • 「普通はこうだよね」という曖昧な常識

だから反論もしづらいし、断る理由も見つからない。


英文で見ると、しんどさがよく分かる

たとえばこの一文。

I’m expected to finish everything perfectly.

意味はこうです。

(完璧に仕上げるのが当然だと思われている)
※「命令された」感じはしないのがポイント

誰かに「やれ」と言われたわけじゃない。
でも、「完璧じゃないとダメな人」という前提がすでに置かれている。

これが、be expected to の正体です。


なぜ be expected to は一番疲れるのか

理由はシンプルです。

  • ゴールが曖昧

  • 合格ラインが見えない

  • 頑張っても「当然」で終わる

have to なら、終わりがあります。
be supposed to なら、役割を果たせば一区切りです。

でも be expected to は違います。

「できて当たり前」
「できたら、次も同じレベルで」

終わりがありません。


これは英語の話であり、仕事の話でもある

英語表現として be expected to を理解すると、
現場で起きていることも、少し言語化できるようになります。

「自分がダメなんじゃない」
「これは“期待”の圧なんだ」

そう分かるだけで、
気持ちはほんの少し軽くなります。


最後に:心の中で使える一文

次に、理由もなく疲れていると感じたら、
心の中でこう言ってみてください。

I’m expected to do more than what’s said.

(言われている以上のことを、期待されているだけだ)

それだけで、
状況を一歩引いて見ることができます。

▼この記事の続編はこちら

「期待」という名の無賃残業を断る技術。 ――『be expected to』に境界線を引くための3つのステップ


まとめ

  • be expected to は命令ではない

  • でも「期待」という形で人を追い詰める

  • 主語は人ではなく、空気や前例

  • だから一番、静かにしんどい

英語は、ただの言葉ではありません。
現場の感情や、説明しづらい疲れを、
そっと言語化してくれる道具でもあります。

もし今日、少し疲れているなら。
それはあなたが弱いからではなく、
期待されすぎているだけかもしれません。

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