新しい環境やスキルに「慣れる」ことを英語で伝えたいとき、多くの人がまず思い浮かべるのが “be used to”ですよね。
もちろん、これも正しいです。
この表現は「もうすでに慣れている状態」を表すことがほとんど。
では、「これから慣れていく」「だんだん慣れてきた」といったプロセスを表現したいときはどうすればいいのでしょうか?
今回は、ネイティブがよく使う3つの便利なフレーズをご紹介します。
ということを毎日ブログにて記事を書いている英語学習者です。
必ずしもプロでなくても、お役に立つ情報を提供できると思っています。
ちなみにさっきはこんなことを書きました。
海外からのお客様を20人おもてなし!すぐに使える英語フレーズ集
では本題。
早速一つ目は…
1. get the hang of it
この表現は、「やり方のコツや要領をつかんで慣れる」というニュアンス。
特に、自転車に乗る、楽器を弾く、新しいソフトウェアを操作するといった、身体的な感覚や技術を伴うものによく使われます。
- It’s difficult at first, but you’ll get the hang of it soon. (最初は難しいけど、すぐに慣れるよ。)
- I’m still learning how to play the guitar, but I think I’m slowly getting the hang of it. (まだギターの弾き方は勉強中だけど、少しずつ慣れてきたと思う。)
hangの特徴を活かすために語源はすごく興味深いです。
◆「get the hang of it」の「hang」の語源
「hang」の語源は、文字通り「吊るす」「掛ける」という意味から来ています。
というのは、昔、特に手作業の職人仕事において、道具や材料を扱う際に独特の「手の掛かり方」や「力の入れ方」がありました。
この「手の掛かり方」が、その作業をうまくこなすための「コツ」や「要領」と見なされるようになり、そこから「get the hang of it」という表現が生まれたというわけです。
要するに、ただ道具を「持つ」のではなく、特定の場所に「吊るす」ように、あるいは特定の角度で「掛ける」ように持つことが、技術を習得する上で重要だった、という背景が考えられます。
例えば、
1. 釣りの竿
ただ持つだけではなく、糸を垂らして(吊るして)、アタリがあったときに絶妙なタイミングで合わせたり、魚の引きに合わせて竿の角度を調整したりする必要があります。この「竿を扱う」という行為は、まさに「吊るす」という動作の中に高度な技術が凝縮されています。
2. 彫刻刀やノミ
これも「持つ」というよりは、木や石に刃先を「掛けて」、一定の角度と力で削り進めていきます。ただ握るだけでは、美しい曲線や正確な溝は彫れません。刃をかける角度、力の加減、動かす方向など、非常に繊細なコントロールが求められます。
3. バイオリンやチェロの弓
弦楽器の弓は、単に持つのではなく、弦に「掛けて」音を出します。弓の毛を弦にどれだけの力で押し付けるか、どの速度で動かすか、どの位置で弦に当てるかによって、音色や強弱が大きく変わります。まさに「弓を操る」という感覚が重要です。
4. 溶接機
溶接棒を「持つ」だけではなく、溶接したい部分に「掛けて」アークを飛ばし、熱で金属を溶かしながら接合していきます。このとき、溶接棒を当てる角度や、動かすスピード、溶接棒と金属の間の距離を一定に保つことが非常に重要です。少しでもバランスを崩すと、うまく溶接できません。
5. 伝統的な和食の包丁
刺身を引くときや、野菜の飾り切りをするときに使う包丁は、ただ握るのではなく、食材に刃を「掛けて」、力をかけずにスーッと引くことで、美しい切り口を生み出します。この「掛ける」感覚は、長年の経験がなければ習得できません。
考えてみると身近な例にもたくさんありましたね。これでhungの特徴がイメージできました。
つまるところこれらの例は、単に「握って使う」という行為を超えて、道具と対象物との間に生まれる「力のやりとり」や「繊細なバランス」をコントロールする技術が求められます。
これはまさに、「get the hang of it」が生まれた背景にある、職人技の要領に通じるものだと言えますね。
では2番目。
2. get the knack of it
“knack” は「器用さ」や「巧みなやり方」といった意味を持つ言葉。
そのため、この表現は “get the hang of it” とほぼ同じ意味で使えますが、どちらかというと、手品の種を明かすような 「手際よくやるためのコツ」 というニュアンスが強いです。
- This recipe is tricky, but you’ll get the knack of it after a few tries. (このレシピは難しいけど、何回か試せばコツがつかめるよ。)
- He has a knack for fixing things. (彼は物を直すのがとても器用だ。)
これも語源を見てみましょう。
◆「get the knack of it」の「knack」の語源
「knack」の語源は、中世英語の「gnack」や古ノルド語の「knakkr」(物を打つ音)に由来すると言われています。
これは「カチッ」と音が鳴るほど正確で素早い動きや、物を打ち付けるような特定の技術を指していたと考えられます。
そこから、何かを「巧みに」行う才能や「器用さ」を意味するようになり、最終的に「技術的なコツ」や「特殊な能力」という意味で使われるようになりました。
さて、最後はこれです。
3. learn the ropes
この表現は、「仕事や特定の活動における基本的な手順やシステムを学んで慣れる」 という意味で使われます。
ロープを扱う船乗りの世界から生まれた言葉で、「仕事の全体像を把握し、要領を得る」というニュアンスです。
- It took me a month to learn the ropes at my new job. (新しい仕事に慣れるのに1ヶ月かかった。)
- Don’t worry, I’ll teach you everything you need to know to learn the ropes. (心配しないで、仕事の基本を全部教えるから。)
この表現は、船乗り の世界に由来すると言われています。
帆船の時代、新米の船乗りが船に乗り込むと、まず最初に覚えなければならないのが、船を動かすために必要な無数の「ロープ」(ropes)でした。
- どのロープを引くとどの帆が上がるのか。
- どのロープを緩めると船の向きが変わるのか。
- 様々な結び方(ノット)の種類。
船を航行させるには、これらのロープを完璧に理解し、使いこなす必要があり、新米の船員は、経験豊富な船員から、文字通り「ロープの扱い方」を教えてもらい、それに慣れていきました。
この「ロープを学ぶ」というプロセスが、やがて「新しい仕事や活動の基本的なやり方や手順を学ぶ」という意味に転用されて、現在の「learn the ropes」というイディオムになったというわけです。
つまり、この「ropes」は、単なる物理的なロープではなく、「物事のやり方、手順、システム全体」を象徴しています。
「get the hang of it」や「get the knack of it」が 感覚や器用さ を指すのに対し、「learn the ropes」は 体系的な知識や手順 を学ぶというニュアンスが強いのは、この語源から来てるのです。
では、全体の内容をまとめます。
まとめ
シンプルに「慣れる」を表現すると、このようになります。
- be used to:すでに慣れている 状態
- get the hang of it: 身体的な感覚 で慣れていく 過程
- get the knack of it: 器用さ を活かして慣れていく 過程
- learn the ropes: 仕事や手順 を学んで慣れていく 過程
これらの表現を使い分けることで、あなたの英語はより豊かで自然になります。
「慣れてきた」という気持ちを、ぜひ色々な言い方で表現してみることにより、英語力ワンランクアップは間違いないです。
ということで、今回の学習レポートは以上です。


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