a lot” だけじゃもったいない ── “multitude” がもつ響きの深さ

🪶 誰もが通る「a lot of」からの卒業

 

英語を学んでいると、「たくさんの〜」を言いたい場面って本当に多い…

学生時代から、誰もが最初に習う表現は“a lot of”

私もこれまで、特に考えることなく、自然とこの万能なフレーズを使ってきました。日常会話ではもちろん、メールでも、レポートでも、「多ければa lot of」で事足りていたわけですが、

ところがある日、ふと目にした少し古い英文に、こんな表現が出てきたのです。

“Love covers a multitude of sins.” (愛は多くの罪を覆う)

“a lot of” ではなく “a multitude of”。

同じ「たくさん」なのに、どこか言葉の響きに深みと、厳かなまでの重厚さを感じました。

その瞬間、multitude という単語が心に残り、「この言葉には、ただの数量以上の何かが宿っている」と直感したのです。


 

🌍 “a lot” と “multitude” の違いは「温度」と「スケール」

 

まずは、基本的な意味の違いをおさらいしましょう。

単語 意味 トーン イメージ
a lot of たくさんの カジュアル・日常的 数量を正確に伝える、平易さ
a multitude of 数え切れないほどの、おびただしい フォーマル・文学的 豊かさ、圧倒的な多さ、感情的な波

“a lot of” が数字で表現できる「多さ」であるのに対し、“multitude” は、その「多さ」が引き起こす感情的な波、あるいは圧倒的な光景のスケールを表します。

さらに、語源に目を向けると、このニュアンスの違いがより明確になります。

💡 言葉の背景:

  • “a lot”: 元々は「くじ(lot)」という意味から転じて、「多くの割り当て」という物質的・分配的なニュアンスが強い言葉です。
  • “multitude”: ラテン語の multitūdo(多数、群衆)に由来し、集合体群衆といった、一つ一つを数えるのが難しい「おびただしい存在」を指します。

 

💬 たとえばこんな違い:情景描写の解像度を上げる

 

具体的な例文で、文章の温度解像度の違いを体験してみましょう。

  • 🌼 “a lot of” で表現する場合

    There were a lot of people at the festival. 👉 祭りにはたくさんの人がいた。(事実の伝達。混雑具合は不明)

  • 🌸 “multitude” で表現する場合

    There was a multitude of people at the festival. 👉 祭りには人があふれていた。(圧倒される、あるいは見渡す限りの群衆という情景を表現)

“a lot” は数量的な「多い」に留まりますが、“multitude” は感情的な「多すぎて言葉にならない」というニュアンスを込めます。たった一語で、文章を記す人の高揚感や、対象への敬意、あるいは驚きが伝わってくるんですね。


 

✨ 会話と文章での位置づけ:日常に品格を添える「使いどころ」

 

正直に言うと、友人間でのカジュアルな会話で「I have a multitude of problems.」と言うと、少し大げさに聞こえてしまうかもしれません。

しかし、“multitude” の真価は、「書く」シーンや**「少し丁寧な対話」の場**で発揮されます。これは、単なる日常会話ではなく、自分の考えをまとめ、感情を丁寧に伝えたい、日常の延長線上にある特別な瞬間。

 

📝 日常の延長線上にある「使いどころ」

 

“multitude” は、「数が多い」という事実ではなく、「その多さがもたらす、感情や状況の重み」に焦点を当てます。

日常会話でのボキャブラリーに加えたいから…

 

1. 就職・転職の志望動機で、真剣な決意を示すとき

 

“I chose this path for a multitude of reasons, most importantly, the company’s commitment to sustainability.”

(私がこの道を選んだのは、数えきれないほどの理由(熟慮の結果)がありますが、最も重要なのは、貴社の持続可能性への取り組みです。)

単に「多くの理由」ではなく、「深く、重みのある熟慮の結果」という、真剣な決意を表現できます。

 

2. 趣味やレビューのブログ記事で、圧倒的な魅力を伝えるとき

 

“This tiny café offers a multitude of unique coffee beans sourced globally.”

(この小さなカフェは、世界中から仕入れた選びきれないほどの多様なコーヒー豆を提供しています。)

単なる「たくさんの種類」ではなく、「選びきれないほどの多様性、豊かさ」という、感嘆と賞賛の気持ちを込めることができます。

 

3. 上司・顧客への報告メールで、要因の複雑さを伝えるとき

 

“The delay was caused by a multitude of small but complex factors that required careful adjustment.”

(この遅延は、慎重な調整を要する絡み合った複雑な要因の集合体によって引き起こされました。)

単なる「多くの原因」ではなく、「絡み合った複雑な要因の集合体」という、丁寧な分析と背景の重さを表現します。

 

4. 自己啓発のエッセイやSNS投稿で、思慮深さを表現するとき

 

“There is a multitude of perspectives to consider when dealing with this ethical dilemma.”

(この倫理的なジレンマに対処する際には、おびただしい数の(無視できない重要な)視点を考慮する必要があります。)

「多くの見方がある」という事実を超え、「おびただしい数の、重要な視点がある」という、物事に対する思慮深さや敬意を伝えることができます。


 

🌠 言葉の「深み」を味わう

 

英語の魅力は、同じ意味でもトーンを変えて伝えられること。

“a lot of” は、親しみやすく軽やかで自然体。 “multitude” は、静かに心を動かし、知的な深みを感じさせる上品さ。

その違いを感じ取れるようになると、英語はただのコミュニケーションツールではなく、自分の感情を「質感」ごと伝える、より豊かな表現手段へと進化します。

 

💭 まとめ:この言葉との出会いがもたらした「深み」

 

“a lot of” は万能で日常的。 “a multitude of” は特別な響きをもつ、上品で重厚な言葉。

意味は同じでも、伝わる感情の濃度が違うのは明らか!

冒頭でも述べたように、かつては、私も“a lot of”だけで済ませていました。

しかし、“multitude” の響きの深さに気づけたことで私の英語表現は一変し、単に単語を置き換える以上の、自分の感情をより正確に、より深く伝えることができるようになったという実感です。

次に「たくさん」と言いたくなったとき、ほんの少し立ち止まって、“multitude” を思い出してみてください。

その一語が、あなたの英語に、きっと静かな深み確かな品格を加えてくれるでしょう。

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