なぜ I know と言うと、相手が黙るのか? ― know と understand が分ける「共感の主導権」

1. 「分かってるよ」と言ったのに、なぜか終わってしまう会話

誰かが悩みを打ち明けてきたとき、
こんなふうに返したことはありませんか?

  • I know.

  • I know how you feel.

日本語にすると
「分かるよ」「その気持ち、分かる」

悪い言葉ではないはずなのに、
相手がそれ以上話さなくなった。
会話が、すっと終わってしまった。

英語ではこれ、よく起こります。
理由はシンプルです。


2. know は「理解」ではなく「完了」を表す

英語の know は、
単なる「分かる」ではありません。

know が持つコアは、

情報として把握し、完了している状態

です。

だから I know と言った瞬間、
会話の中ではこう処理されます。

「もう説明はいらない」
「話は理解済み」

つまり、話題がクローズされる


3. I know が持つ、見えない主導権

さらに重要なのはここです。

I know は、無意識のうちに
主導権を話し手側に引き寄せます

  • 理解したかどうかを判断しているのは「自分」

  • 相手の気持ちを「把握できた」と宣言している

その結果、相手にはこう聞こえることがあります。

「あなたの気持ちは、もう私の理解の中に収まった」

これが、
安心ではなく 沈黙 を生む理由です。


4. understand は「まだ向き合っている」サイン

一方で understand はどうでしょうか。

  • I understand.

  • I understand how you feel.

  • I’m trying to understand.

understand が示すのは、

相手の中に入り込もうとしている途中

という姿勢です。

完了ではない。
まだ、相手の側に立っている。

だから understand には、
会話を続ける余白があります。


5. 同じ「分かる」でも、会話はこう変わる

❌ 会話を閉じる

A: This situation is really hard for me.
B: I know.

→「そうなんだ」で終了。

⭕ 会話を開く

A: This situation is really hard for me.
B: I understand. That sounds really tough.

→ 相手は「続けていい」と感じる。


6. なぜ I know how you feel は危険なのか

特に注意が必要なのが、この表現です。

  • I know how you feel.

共感のつもりで使われがちですが、
英語ではこう聞こえることがあります。

「あなたと同じ経験をした」
「同じレベルで分かっている」

でも実際には、
人の感情は完全に同じにはなりません

だから英語では、こちらの方が安全です。

  • I understand how you feel.

  • I can imagine how difficult that must be.


7. 英語は「共感」でも主導権をチェックする

ここで、シリーズの共通テーマが出てきます。

英語はいつも、こう問いかけています。

今、判断しているのは誰?
会話のハンドルは誰が握っている?

  • I know
     → 理解は完了。主導権は話し手。

  • I understand
     → まだ相手の側。主導権は相手。

この違いが、
共感に見えるか、打ち切りに見えるかを分けます。


8. 実践:こう言い換えると会話が続く

✔ まず受け止める

  • I understand.

  • I’m trying to understand.

✔ 相手の世界に留まる

  • That sounds really hard.

  • I can see why you feel that way.

✔ 完了させない

  • Tell me more.

  • What happened next?

これらはすべて、

「まだあなたの話の途中です」

というサインです。


結び:英語の understand は、相手の席に座る言葉

know は便利な単語です。
でも、人の気持ちに向き合う場面では、
強すぎることがある。

understand は、
相手の席に一緒に座るための言葉。

英語で共感を伝えたいとき、
「分かったよ」と言う前に、
一度だけ立ち止まって考えてみてください。

今、会話を終わらせたいのか
それとも、そばにいたいのか

英語は、その選択を
驚くほど正直に映し出します。

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