「なぜ落とさなかったのか」を説明できていますか? 変色現場で“即ストップ”を判断した実例共有

同業の方なら、一度は経験があると思います。

  • 洗剤をかけても全く反応しない

  • でも「何もしない」のも気持ちが悪い

  • ここで止めたら、手抜きと思われないか不安になる

今回の現場は、まさにその判断力が問われるケースでした。


現場概要

  • 築年数:15年

  • 物件:分譲マンション空室

  • 作業内容:空室一式クリーニング

クローゼットの扉を開けた瞬間、内部の壁面に垂直に伸びる茶褐色の垂れ跡が目に入りました。

一見すると

  • 液体が垂れた跡

  • ヤニ汚れの侵入
    のようにも見える、よくある「判断に迷う見た目」です。


プロとしての判断ログ(時系列)

① 強アルカリ洗剤をテスト

プロのセオリー通り、まずは強アルカリ剤を塗布。

しかし

  • ヤニ特有の黄変反応なし

  • 浮き・にじみも一切なし

この時点で、表面付着汚れの可能性がかなり下がると判断。


② メラミンスポンジで軽擦

次に、最小限の力でメラミンを当てました。

結果は

  • スポンジ側への移色ゼロ

  • 表面に変化なし

ここで
「これは汚れではない」
という判断がほぼ確定しました。


③ 素材と築年数を再確認

  • 築15年

  • クロス下地はボード+接着剤

  • 垂れ跡は接着部・縁に沿った位置

この条件が揃った時点で、
洗浄対象ではなく、素材内部の変色(沈着)
と判断し、即ストップしました。


なぜ“深追い”がクレームに直結するのか

この状態で作業を続けた場合、どうなるか。

  • 汚れは落ちない

  • しかし表面コーティングだけが削れる

  • 部分的なテカり・白化が発生

結果として
「汚れは残り、質感だけが壊れる」
という、変色現場で最も多い失敗パターンに入ります。

この状態で引き渡せば、
「ここだけ変じゃないですか?」
という指摘はほぼ確実です。


なぜ特定の場所だけが黄ばむのか(同業者向け整理)

今回、クロス全体は比較的白さを保っていました。
それでも、縁や特定部位だけが頑固に変色していた理由は明確です。

特定部位が変色しやすい理由

  • 空気が滞留する「角・縁・上部」

  • 静電気を帯びやすいプラスチック・樹脂

  • 接着剤・可塑剤を含む部位

  • 面積が小さく、汚れが濃縮される

今回の垂れ跡も、
長年かけて接着剤成分や過去の汚れが表面化したもの
と考えるのが自然です。


クレームが起きる本当の原因

変色現場のクレームは、
技術不足ではなく、共有不足で起きます。

よくあるクレーム発生パターン

  1. 作業後に初めて「落ちません」と伝える

  2. 止めた理由を説明していない

  3. 客観的根拠(反応・写真)が残っていない

今回の現場では、
「止める判断そのものを成果物として残す」
ことを意識しました。


実際に行ったクレーム予防行動

  • 洗剤テストは最小限で止める

  • 反応がない状態を写真で記録

  • 「これ以上は危険」という判断を言語化

  • 作業後ではなく、判断時点で共有

これだけで、クレームの芽はほぼ潰せます


そのまま使える説明テンプレ(現場用)

管理会社・オーナー向け

該当箇所は洗剤反応・移色ともに確認できず、
素材内部の変色と判断しました。
これ以上の洗浄は、表面コーティングの損傷や
質感ムラを引き起こすリスクがあるため、
素材保護を優先して作業を止めています。

入居者・一般向け

こちらは汚れではなく、
長年で素材自体が色づいてしまった状態です。
無理にこすると、今より目立つ傷が出るため、
今回は現状を保つ判断をしています。


NGワードと置き換え表現

使わない

  • 「無理です」

  • 「限界ですね」

  • 「取れません」

使う

  • 「素材保護の観点から」

  • 「仕上がりを悪化させないため」

  • 「現状が最善と判断しました」

言葉を変えるだけで、
印象と結果は大きく変わります


まとめ:クレーム回避も技術の一部

落とす技術は、経験を積めば上がります。
しかし、

「今日はここで止める」
「これ以上やらない理由を説明できる」

この判断こそ、
現場経験を重ねた人間にしかできない技術です。

ハウスクリーニングは
「どこまで落とすか」以上に
「どこで止めるか」を判断する仕事

今回の現場は、
それを改めて実感させられた一件でした。

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