【極狭・近隣駐車あり】プロが教える!高圧洗浄「水しぶき飛び散り」を完璧に防ぐブルーシート活用術と安全対策

高圧洗浄のプロとして、水しぶきの飛散対策は避けて通れない最大の課題です。

特に、隣地との距離がわずか1メートル未満、かつ駐車中の車への水濡れが絶対に許されない「極狭・超難関現場」に直面したことはありませんか?

通常の養生では対応しきれないこのような現場で、私たちは屋上から吊り下げる「ブルーシート立体防御」という工夫を採用しました。

本記事では、この困難な現場を事故・苦情ゼロで乗り切るために実行した、具体的なブルーシートの固定方法から、急角度の危険な脚立作業におけるフルハーネス活用術まで、プロの技術と安全対策の全貌を公開します。


2. なぜこの対策が必要だったのか?:超難関現場の4つの制約

 

今回高圧洗浄を行った現場は、単に汚れているというだけでなく、作業の難易度を跳ね上げる複数の厳しい制約がありました。

この制約こそが、私たちが通常の養生ネットや部分的なシートではなく、ブルーシートによる「立体防御」を採用した最大の理由です。

この現場が「超難関」だった4つの理由

 

No. 制約条件 技術的課題とリスク
1 極狭の通路幅 外壁から隣の敷地までの通路幅はわずか1メートル以下。脚立を立てるスペースが限られ、安定した作業が困難。
2 隣地への侵入禁止 駐車場の地主様から、敷地内への立ち入りが厳禁とされていた。隣地から高所作業を行うことが不可能。
3 水しぶき厳禁 隣地には常に駐車中の車があり、高圧洗浄の水しぶき(ミスト)が一切かからないよう完璧な隔離が必要。
4 有刺鉄線と安全リスク 敷地の仕切りには有刺鉄線が張られており、通路の狭さから脚立が背面に倒れれば、作業員が重大な怪我を負う危険性があった。通常の脚立作業では安全確保が不可能

なぜこの一面だけ汚れていたのか?

 

築10年程度の建物でしたが、全体が綺麗な中で、この駐車場に面した一面だけが特に雨だれで目立っていました。

原因は、この洗浄面の上部コーキングにヒビが入り、そこから雨水が垂れていたためです。洗浄後に修復工事を前提として、この面の頑固な汚れを完璧に除去する必要がありました。


3. 核心ノウハウ①:水しぶきを完璧に防ぐ「ブルーシート立体防御」の組み方

 

隣地への水しぶきをゼロにするため、今回は建物の屋上からブルーシートを垂らし、外壁面全体を作業空間として囲い込む方法を採用しました。

採用資材の選定

 

資材 採用した理由と用途
ブルーシート 厚手(#3000クラス推奨)。水圧による破れを防ぎ、ミストを確実に受け止める強度を重視。サイズは外壁の高さと幅に合わせて選定。
トラロープ 9mmまたは12mm。強度が高く、強風による負荷に耐えられるものを選択。屋上でのアンカーとシートの固定に使用。
養生テープ(強力布製) ブルーシートの重なり部分や、構造物との隙間を完全に塞ぎ、高圧洗浄のミストが漏れる余地をなくすために使用。

固定方法の詳細と強風対策の技術

手前に見えているのは高圧洗浄機のためのホースで、ブルーシートとは関係ありません。屋上からトラロープで両端と真ん中の3つを縛りました。

屋上から見るとこんな感じです。

 

 

このトラロープが逆の壁面に向かい、逆の壁面の下に向けてトラロープを渡すとこんな感じになります。

 

 

逆の壁面にトラロープを垂らし下でくくりつけました。

 

 

これでしっかりとブルーシートを固定できました。

ブルーシートを屋上から垂らす際、最も重要なのは「固定の安定性」です。

  1. 屋上でのアンカー確保:

    • ブルーシートの上端(両端と中央など3~4箇所)のハトメにトラロープを結び付けます。

    • トラロープは屋上の手すりや強固な構造物(アンカーポイント)に結び、シートが壁面に沿って垂直に垂れるよう、たるみなく張ります。

  2. 逆側へのロープの渡し(シートの壁面固定):

    • 垂らしたシートが風でバタついたり、高圧水の反動で揺れたりするのを防ぐため、屋上から長いトラロープを渡し、シートの裏側を通して逆側の壁面下部(手の届く範囲)でしっかりとくくりつけました。これにより、シートが外側へ膨らむのを防ぎます。

  3. 冬場の強風対策:

    • 今回は冬場の作業で風が強く、シートが煽られるリスクがありました。万が一の事態を防ぐため、作業中も屋上で作業員を待機させ、ロープの張り具合を監視し、予期せぬ突風に備えてロープを押さえる体制を維持しました。

4. 核心ノウハウ②:急角度の脚立作業を安全にする工夫

 

通路幅が1m未満の現場では、脚立を安全な角度(75°程度)で立てることが不可能であり、非常に急角度での作業を強いられます。

この状況下で落下事故と有刺鉄線による重大な怪我を防ぐため、以下の安全対策を徹底しました。

フルハーネスの選定理由と活用

 

通常の腰部の安全帯(胴ベルト型)ではなく、フルハーネス型安全帯を義務付けました。

  • 選定理由: 急角度の脚立上では、体勢を崩した際に腰ベルトでは身体が反転し、背後の有刺鉄線側へ倒れ込むリスクが極めて高まります。フルハーネスは、落下阻止時に体全体を保持し、作業員が安定した姿勢を保てるため、重大な二次災害を防ぎます。

  • アンカーポイント: 高所作業中の命綱は、屋上付近の強固な構造物をアンカーポイントとして確保しました。

二人作業による安全の徹底

 

洗浄は、単独作業の危険性が高いため、二人一組による連携作業で行いました。

役割 実施内容 安全上の重要性
作業員A(洗浄担当) フルハーネスを装着。脚立と壁にもたれかかるような姿勢で洗浄ガンを操作する。片手は常に脚立または壁に触れ、安定を保つ。 高所での作業に集中させつつ、万一の落下リスクを命綱で阻止する。
作業員B(安全確保担当) 地上で脚立を外側からしっかりと固定し、脚立が背後や横に倒れないように監視・体重をかける。 脚立の角度が急なことによる転倒リスク、特に有刺鉄線側への倒れ込みを物理的に防ぐ。

脚立を少しずつずらしながら高所を洗浄しましたが、常に作業員Bが固定することで、作業員Aは洗浄に集中でき、有刺鉄線側への転倒リスクを完全に排除できました。


5. 効率を最大化する洗浄機の配置と手順

 

作業効率と水圧の安定性を考慮し、高圧洗浄機本体の配置と作業フローを工夫しました。

高圧洗浄機の設置とスペック

写真の状況は、洗浄後の綺麗になった状態でブルーシートを撤去して、荷物も全て片付けた状態です。

 

本体はこんな感じです。

 

  • 設置場所: 中2階の踊り場など、下からでも上からでもホースが届きやすく、機材を水平に置ける場所に本体を設置。

  • 給水: マンション1階の散水栓からホースを取り、延長コードリールと長い高圧ホースを使用して本体を稼働させました。

  • 【技術情報】 使用した高圧洗浄機は吐出圧力**15MPa(メガパスカル)**程度。外壁の素材を傷めず、かつ雨だれの頑固な汚れを剥離させるのに適した圧力を選定しました。

採用した洗浄手順

 

作業員は水しぶき対策として完全なレインコートとゴーグルを着用して作業します。

  1. 洗剤の事前塗布:

    • 汚れがひどかった雨だれ部分には、中性の外壁用特殊洗剤を事前に塗布し、汚れに十分浸透させる時間(5~10分程度)を確保しました。

  2. 屋上からの洗浄(上段):

    • まず屋上からブルーシートをかぶって、下に向けて上から2段目くらいまで洗浄します。これにより、上部の汚れを下に流し、作業効率を高めます。

  3. 脚立からの洗浄(中段):

    • 背が届かない箇所に脚立を立てかけ、作業員A・Bが連携して洗浄します。ノズルの角度と距離を調整し、コーキング部分を傷めないよう細心の注意を払いました。

  4. 地面からの洗浄(下段):

    • 脚立をどかし、地面から足をつけて低所部分を仕上げます。


6. 仕上がりと総括:苦労の末に得られた結果

 

最終確認と徹底した手直し

 

ブルーシートがかかった状態では、ミストで視界が悪く、仕上がりを正確に確認できません。

作業完了後、面倒ではありましたが一旦全てのシートを取り込み、壁面全体の仕上がりを目視で確認しました。

案の定、わずかに汚れの残った箇所があったため、再度シートを垂らして残った箇所だけ追加で作業を実施。「水しぶきゼロ」と「完璧な仕上がり」の両立を目指しました。

まとめ:この現場から得られた教訓

 

準備、作業、撤去まで1日を要しましたが、結果として以下の目標を全て達成しました。

  1. 近隣からの水しぶきによる苦情ゼロを達成。

  2. 作業員の事故・怪我ゼロで作業を完了。

  3. お客様に満足いただける完璧な仕上がりを提供。

狭所での高圧洗浄作業は、技術力だけでなく、事前のリスクアセスメントと「安全」と「近隣対策」を両立させるための知恵と工夫が不可欠です。

今回の「ブルーシート立体防御」と「フルハーネスによる安全確保」は、同じような困難な現場に直面しているプロの皆様の、実践的な解決策として役立つはずです。

 

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