【熱中症に負けない指導のヒント】
「勝利至上主義の指導は、本当に子どもを成長させているのでしょうか?」
真夏の炎天下で汗を流す子どもたちを見るとき、指導者や保護者の心には「熱中症の不安」と並んで、「この教え方で子どもの心は折れないか?」という根深い疑問があるはずです。
勝ちを目指すあまり、ミスをした選手を厳しく叱責したり、萎縮させてしまう指導は少なくありません。
しかし、心理学とスポーツ科学が示すのは、「失敗を恐れる心」こそが成長を止める最大の壁だということです。
先日、大阪府の服部緑地公園で、熱気に満ちた中でも誰もが清々しくプレーする少年サッカーチームを目撃しました。
彼らが実践していたのは、単なるテクニックではなく、子どもの「自己肯定感」を最大限に高める指導の原則でした。
この記事では、元アスリートの視点から、スポーツの現場から家庭での子育てまで応用できる、失敗を力に変える「最強の指導原則3選」を、熱中症への配慮という重要な視点も交えながら詳しく解説します。
🔥 真夏のグランドで私が目撃した「爽やかなチーム」の秘密
その出来事は、2023年7月の夏休みに入った頃、日曜日の午後4時過ぎに起こりました。
大阪府豊中市の服部緑地公園を散策していた私は、グランドで練習に励む少年サッカーチームの光景を目にしました。遠目から見ても小学生の高学年くらいでしょうか。
当時、全国では熱中症が疑われる痛ましい報道が相次いでいたため、「こんなに暑い中、大丈夫だろうか?」と一瞬不安がよぎりました。
夕方とはいえ、雲一つなく太陽が照りつける炎天下。
大人が出歩くのを避けるほどの状況です。
しかし、しばらく彼らのプレーを眺めていると、不安は「感銘」へと変わりました。
炎天下という最もリスクの高い環境で、彼らが一貫して守り、実践していたこと。それこそが、心と体を守り、自己肯定感を育む「指導の原則」だったのです。
🥇 指導の原則1:自己肯定感を育む土台「配慮」
自己肯定感とは、自分を価値ある存在として受け入れ、前向きに挑戦する力の源です。
しかし、そもそも子どもが「安全ではない」と感じている環境では、自己肯定感どころか、スポーツそのものへの意欲さえ失われてしまいます。
このチームが素晴らしかった点のひとつは、指導者が「子どもの生命と安全」に最大限に配慮していたことです。
1. 炎天下のリスク管理は「指導者の責任」
真夏の練習におけるリスク管理は、個人の根性論で片付けてはいけません。
山形県の痛ましい事例からも分かる通り、熱中症予防の指標となる**「暑さ指数(WBGT)」**の測定と、それに基づいた行動指針が欠かせません。
指導者が技術指導に熱中しすぎて、水分補給の時間を削ったり、「若いうちは大丈夫」と無理を強いるのは、自己肯定感を育む以前の、信頼関係を破壊する行為です。
少年たちのチームは、おそらく休憩や水分補給のルールが徹底されていたのでしょう。
体調面への配慮という「安全の土台」が築かれているからこそ、子どもたちは安心して伸び伸びとプレーできていたのです。
💡 家庭への応用: 子どもが無理をしている時、「根性論」で乗り切らせるのではなく、「休んで大丈夫」「気持ちを最優先にしていい」と伝えることが、「あなたは大切にされている」という自己肯定感の種になります。
🥈 指導の原則2:一人よがりを許さない「貢献の尊重」
自己肯定感は、「自分は価値のある存在だ」と感じることで育まれます。
しかし、スポーツにおいて、その「価値」は得点した人だけのものではありません。
私が目撃した少年サッカーチームは、炎天下にもかかわらず、パスを回し、連携しながらゴールへ向かっていました。
彼らのプレーから読み取れたのは、「誰か一人のヒーロー」ではなく「全員の貢献」を尊重する精神でした。
1. 独り占めはNG!チームを「萎縮」させる行為
サッカーに限らず、チームスポーツにおいて、ある選手が全てを独り占めしようとドリブルし、強引にシュートを決めたとします。
一見、活躍に見えますが、その勝利は本当にチーム全員の心を爽やかにするでしょうか?
多くの場面で、独りよがりなプレーは、他の選手の「自分はパスをもらえない」「自分の役割はない」という無力感や萎縮を生みます。
チームプレーとは、「味方がシュートを打ちやすいようにパスをする」「守備で体を張ってボールを奪う」など、それぞれの役割を果たした結果、成功に至るものです。
2. 「見えない貢献」に光を当てる指導
指導者がすべきことは、目立つゴールを決めた選手を褒めるだけでなく、そのゴールに至るまでの**「見えない貢献」に具体的に光を当てる**ことです。
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「〇〇君が全力でディフェンスに戻ってくれたから、ボールを奪われずに済んだぞ!」
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「そのタイミングの良いパスがあったから、シュートを打てたんだ。ありがとう!」
このように声をかけることで、アシストやディフェンス、声かけといった地道な役割を果たした選手も「自分はチームに不可欠な存在だ」と感じ、自己肯定感を育むことができます。
💡 家庭への応用: 子どもが何かを達成した時、「すごいね!」だけでなく、「お皿洗いを手伝ってくれたから、ママは集中して仕事ができたよ」のように、協力や配慮といった「縁の下の力持ち」の行動を具体的に褒めましょう。役割を尊重し合う姿勢が、家族全体の自己肯定感を高めます。
🥉 指導の原則3:失敗を恐れず挑戦する心を作る「許容」
熱中症の不安が拭えない炎天下でさえ、子どもたちが清々しくプレーできる最後の鍵。それは、「失敗しても大丈夫」という安心感です。
どれほど練習を積んでも、サッカーではボールを奪われること、シュートを外すこと、ゴールをガラ空きにしてしまうことは必ず起こります。
1. 失敗を責める言葉は「挑戦への扉」を閉ざす
パスミスをした時、シュートを決め損ねた時、もしチームメイトや指導者から「何をしてるんだ!」「お前のせいで負けた」といった強烈な叱責を受けたらどうなるでしょうか?
子どもは自分を過度に責め、次は失敗しないようにと、「挑戦しない」「消極的な選択をする」道を選んでしまいます。
これこそが、自己肯定感を最も早く、深く傷つける行為です。
心理学において、失敗を恐れて行動が止まってしまう状態は、成長にとって致命的です。
私が目撃した少年チームには、ミスに対して怒鳴りつけるような雰囲気がありませんでした。
むしろ、次のプレーに集中を促すような、前向きな空気が満ちていたのです。
2. 「失敗」を「力」に変えるペップトークの力
指導者がすべきことは、結果に対して感情的に怒ることではなく、「挑戦」そのものを賞賛し、「次」に目を向けさせることです。
ここで有効なのが、スポーツ現場で使われる**ペップトーク(Pep Talk)**の精神です。これは、選手を励まし、勇気づける短い激励のメッセージです。
たとえば、決定的なミスをした選手に対して:
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失敗の瞬間に立ち止まらない:「ドンマイ!次、切り替えよう!」
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挑戦した勇気を認める:「よくあの状況でシュートを打った!その積極性が素晴らしい」
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行動を促す質問に変える:「次は、どうすれば成功しそうかな?」
私が高校時代、リレーで抜かれてしまった時、「よくやった!相手が相手だ!謝るほうがおかしい」と言われた経験は、今でも鮮明に覚えています。
この言葉によって心が晴れ、「自分は受け入れられている」という自己肯定感が回復し、次へと進むことができました。
失敗を責めない「許容」の精神こそが、萎縮せず、**「もっと上手になりたい」**という内発的な成長のエネルギーを生み出すのです。
💡 家庭への応用: テストで悪い点を取ったり、習い事でうまくいかなかった時、「なぜできないの」と責める代わりに、「この問題に挑戦したことは偉いよ」「よく諦めずに最後までやったね」と、結果ではなくプロセスや努力を褒めましょう。そうすることで、家庭が子どもにとって最も安全な「挑戦の基地」となります。
🚀 まとめ:失敗を力に変える「最強の指導」を日常へ
炎天下の少年サッカーの光景から、私たちは「勝利」や「技術」を超えた、指導と育成における最も重要な原則を学びました。
子どもたちの「自己肯定感」を高め、失敗を恐れず挑戦し続ける強い心を育むために必要なのは、特別なトレーニングでも、厳しい叱責でもありません。
それは、指導者や保護者が実践する、**「配慮」「尊重」「許容」**というシンプルな3つの原則でした。
私自身、高校時代のリレーで失敗し、落ち込んでいた時に仲間から「よくやった!相手が相手だ!謝るほうがおかしい」と声をかけられ、心が晴れた経験があります。
この「良い言葉」こそが、チームを次へと進めるエネルギーになったのです。
スポーツの現場であろうと、家庭のリビングであろうと、この3つの原則は共通して効果を発揮します。
熱中症の危険性が高まる現代において、指導者はまず子どもの体の安全に配慮し、そして失敗を責めない心の安全を確保すること。
これが、子どもたちが伸び伸びと成長し、最終的に「勝利」という成果をもたらす、最も確実で爽やかな指導法であると確信しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次にあなたがすべきこと
この記事を読んだあなたは、指導や子育てにおいて、つい感情的になって叱責しそうになった時、どの原則を思い出すでしょうか?
✅ まずは今日の会話で、子どもの小さな失敗に対し「ドンマイ!」と声をかけることから始めてみませんか。
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