「築年数の古いマンションのユニットバスって、清掃しても綺麗になるの?」
この疑問は、ハウスクリーニングの依頼をいただくお客様から最もよく聞かれる質問の一つです。
一見シンプルで掃除が楽に見える古いユニットバスですが、実は根深いカビや排水の詰まりなど、プロでも手を焼く3つの「落とし穴」があります。

今回は、私が一人で担当したワンルームのユニットバス清掃現場での具体的な体験談と、そこで遭遇したハプニングから得た「排水トラップの確実な攻略法」など、プロが使うノウハウをすべて公開します。
あなたのユニットバスの悩みを解消するヒントがきっと見つかるはずです。
🧼 III. ハプニングからの学び
現場概要:シンプル構造だからこそ潜む「構造の古さ」
今回担当したのは、築年数が経ったワンルームマンションのユニットバスです。
狭い空間に、便器、洗面台、バスタブがすべて一体化している構造。単身者向けとしては「手入れが楽」というメリットがある一方で、清掃のプロから見ると「構造の古さ」に起因する見落としがちな問題が潜んでいます。
このシンプル構造の清掃は、正直なところ、1時間程度でそこそこ綺麗にできると踏んでいました。しかし、すぐにその予想は覆されました。
清掃中に起きた「ゴム栓の鎖切れ」事件
バスタブと洗面台の清掃に取り掛かっていた時のことです。
洗面台のシンクにあるゴム栓には、紛失防止のため、鎖状の細い紐が付いています。この紐が、洗面台の本体と壁の間の、幅わずか数ミリの細い隙間に、まるで引き込まれるようにすっぽりと挟み込まれてしまっていたのです。
引き抜こうにも、なかなか外れてくれません。
「まあ、少し引っ張れば抜けるだろう」と、軽い気持ちで力を加えた瞬間…
プツッ!
鎖状の紐は、見た目の強さとは裏腹に、あっけなく切れてしまいました。

切れた鎖からの教訓と再発防止策
その時は「やってしまった…」という反省しかありませんでしたが、冷静に考えると、これは私の不器用さだけでなく、古い構造ならではの設計ミスのようなものだと気づきました。
この隙間がある限り、次に住む方も、または次の清掃業者も、同じトラブルに遭うリスクがあるわけです。
お客様に引き渡すプロとしては、単に切れた紐を交換するだけでなく、この「トラブルの種」そのものを取り除くことが本当の仕事だと考えました。
プロが考案した再発防止策
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紐の交換スキル習得:まず、切れてしまった紐を手早く元通りに直せるよう、交換作業を面倒がらずに行うスキルを身につけます。これは費用や時間はかかりますが、自分のスキルアップのためには投資する価値があります。
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隙間の封鎖(予防):次にこのような現場に入ることがあれば、同じ事故を防ぐために、この細い隙間に布や目立たない色のテープ(マスキングテープなど)を埋めるように貼って、鎖が入り込まないようにする予防策を講じようと決めました。
ハウスクリーニングの仕事は、ただ汚れを落とすだけでなく、「お客様が安心して長く使えるように、潜在的なトラブルを潰していく」ことも含まれるのだと、改めて痛感した出来事でした。
🦠 IV. プロが教える!ユニットバス清掃の3大難関ポイントと攻略法
しかし、この現場での課題はゴム栓の鎖だけではありません。古いユニットバスには、清掃技術が試されるもっと大きな難関が3つ存在します。
難関1:根深いゴムパッキンのカビ徹底除去と「カビ隠し」の適用判断
ユニットバスの構造上、最も湿気が溜まりやすく、カビが根を張るのがバスタブや壁の継ぎ目にあるゴムパッキンです。
長期間放置されたカビは、通常のカビ取り剤を吹きかけるだけでは落ちません。
プロの攻略法:カビ取り剤の「湿布法」を徹底せよ
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高濃度のカビ取り剤を使用:カビの浸透力を高めるため、プロ仕様のジェル状または高濃度のカビ取り剤を使用します。
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ペーパータオル&ラップで湿布:カビ取り剤を塗布した上から、液剤が蒸発しないようペーパータオルを貼り付け、さらにその上から食品用ラップで覆います(これが「湿布法」)。
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長時間放置:カビの根が深い場合は、状況に応じて30分~数時間、しっかりと時間をかけて浸透させます。
落ちない場合のプロの判断(カビ隠し)
パッキン自体が劣化し、漂白しても黒い色素が取れないレベルになった場合、無理な清掃は素材を傷めます。
その場合は、お客様にご説明した上で、上から専用のカビ隠しコーティング剤を塗布し、見た目を改善します。
これは「最終手段」であり、可能な限り除去する努力がプロの責任です。
難関2:必ず確認すべき排水管の詰まり対策とプロ用薬剤の使い方
古いユニットバスでカビの次に多いトラブル、それが排水管の詰まりです。
ワンルームのユニットバスは、洗面台、バスタブ、そして洗濯機の排水(物件によりますが)が同じ細いトラップやパイプで接続されていることが多く、髪の毛、石鹸カス、皮脂、そして洗剤の残りがヘドロ状になって蓄積しやすい構造になっています。
水の流れが悪い状態では、清掃作業自体も効率が悪くなりますし、何よりお客様の快適な生活を妨げます。
プロの攻略法:物理と化学、両面からの徹底アプローチ
詰まりに対応するには、現場で「物理的」な道具と「化学的」な薬剤を使い分けるスキルが必須です。
① 物理的除去:ワイヤーブラシと真空式クリーナー
まず、排水口のヘアキャッチャーやトラップを取り外し、目視できるゴミを丁寧に取り除きます。その後、ワイヤーブラシ(パイプクリーナー)を挿入し、手の届かない奥のパイプ内にある髪の毛や異物を物理的に絡め取ります。
そして、水が完全に流れないほど重度に詰まっている場合は、真空式パイプクリーナー(強力な吸引ポンプ)の出番です。これを排水口に密着させて強力に押し引きすることで、水の圧力変化を利用して詰まりを根元から引き剥がします。
② 化学的分解:高濃度薬剤による徹底洗浄
物理的な力だけでは取れない、石鹸カスや皮脂による「ヌメリ」の詰まりには、プロ仕様の高濃度排水管洗浄剤(例:水酸化ナトリウムを高濃度に含むアルカリ性の製品)を使用します。
この薬剤は、髪の毛の主成分であるタンパク質や油汚れを強力に分解・溶解する力があります。
【注意】安全第一の徹底 高濃度のアルカリ性薬剤は取り扱いを誤ると非常に危険です。使用する際は、必ず保護メガネ、耐薬品性ゴム手袋、マスクを着用し、換気を徹底することがプロの絶対的なルールです。
規定量投入したら、指定された時間(製品によりますが30分~数時間)しっかりと放置し、詰まりの原因物質を溶かします。
最後に大量の水を一気に流し込み、流れが改善したことを確認して完了です。
難関3:見落としがちな壁の変色(シミ)の見極め方
ユニットバスの壁や床のパネルについたシミや変色は、その原因を見極めるのが難しいポイントです。
原因によって使う洗剤を間違えると、汚れが落ちないどころか、素材を傷めてしまうことになりかねません。
プロの攻略法:酸性かアルカリ性か、汚れの正体を特定せよ
変色の原因は大きく分けて以下の3つに分類されます。
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水垢・石鹸カス:
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正体: 水道水に含まれるミネラルや石鹸の残りが固まったもので、アルカリ性の汚れです。
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対策: 酸性洗剤(クエン酸や有機酸など)で中和して溶かします。
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カビ・バクテリア・皮脂:
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正体: 黒ずみやピンクの汚れ。カビは色素であり、皮脂は酸性の汚れです。
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対策: 塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)またはアルカリ性洗剤で分解・漂白します。
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素材自体の変色(経年劣化・洗剤焼け):
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正体: 清掃ではどうにもならない、素材の色が抜けてしまったり、日光や熱で変質してしまった状態。
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対策: これは清掃では落ちません。お客様に状況を説明し、リフォームやコーティングをご提案します。
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プロは、目立たない箇所で少しずつ洗剤を試すテスト清掃を行い、汚れの正体を特定してから、最適な洗剤で効率よく作業を進めます。
🎯 まとめと今後の清掃スキルアップへの挑戦
今回のユニットバスの清掃経験は、単に「汚れを落とす」という作業を超えて、「構造上の弱点を見つけ、予防策を講じる」というプロとしての視野を広げてくれました。
エアコン洗浄でのドレンからの水漏れ、そして今回のゴム栓の鎖切れ。現場では予期せぬハプニングが必ず起こりますが、その一つ一つを「反省」で終わらせず、「学び」として次に活かすことができれば、それはお客様への提供価値を高めるチャンスになります。
時間や費用をかけても、紐交換や軽微な補修スキルを身につけることは、技術者としての幅と自信につながります。
この経験が、古いユニットバスの清掃でお困りの方や、清掃のプロを目指す方への何らかの気づきになれば幸いです。
❓ よくある質問(FAQ)
Q: 古いユニットバスは清掃にどれくらい時間がかかりますか?
A: 汚れの蓄積度合いによりますが、今回のユニットバスのようにトイレ、洗面、浴槽が一体型のシンプルな構造であれば、プロが徹底的に清掃する場合、詰まりやカビ取りに時間を割いても2時間から3時間程度が目安です。
Q: カビ隠しは一時的な対処法ですか?
A: はい、カビ隠しはカビの色素がパッキンの深部まで染み込んで除去しきれない場合の美観を回復させるための対処法です。カビを根本的に死滅させるものではありませんが、見た目の清潔感は格段に向上します。その後も換気を徹底し、カビの再発を防ぐことが重要です。
Q: 排水口のヌメリは毎日のお手入れで防げますか?
A: 日々のお手入れで大きく防げます。使用後に熱めのシャワーで排水口周りを洗い流し、水分を拭き取るだけでもヌメリの発生を抑えられます。週に一度、塩素系漂白剤を薄めて流すだけでも効果的です。
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