はじめに
「どんなに頑張っても言われる時には言われるから、もう神経質になるのはやめよう」—そう頭ではわかっていても、いざ現場に立つと、またつい細部にこだわりすぎてしまう。
その結果、作業は遅れる、心は疲弊する、そして指摘をされた時の凹み具合は変わらない…。
これは、あなたが「真のプロの視点」を持てていないから
完璧な作業を目指すことは重要ですが、プロの仕事は「クレームゼロ」ではなく、「お客様の納得感」を生むこと。
そして、私たちプロが感じる不安の多くは、実はお客様には見えていない「見えない壁」であることがほとんどなのです。
この記事では、ハウスクリーニング歴30年の私が、自分を責めすぎる癖から卒業するために実践してきた「クレームと上手に付き合うための3つの心構え」をご紹介します。
あなたのその真面目さと努力を、もっと前向きなエネルギーに変えるためのヒントがここにあります。
【心構えその一】プロの神経質は「お客様には見えない壁」と心得よ
私たちハウスクリーニングのプロは、訓練によって一般の方とは「見える視点」が違います。
- 素人の方が見ない角度: 窓ガラスの隅の隅、照明カバーの裏側、家具と壁のわずかな隙間など。
- 素材に応じた知識: この汚れはもうこれ以上取れない、傷になるからここまでしか攻められない、という限界点。
このプロだからこそ気づく「わずかな残りに、あなたは神経質になっていませんか?
しかし、残念ながら、多くの場合、お客様はそのような細部のさらに細部まで見ていません。
あなたが不安に感じているのは、プロである自分にしか見えない、つまりお客様にとっては「そもそも気にも留めていない場所」であることがほとんどなのです。
大切なのは「チェックリストの合格」ではなく「期待値の調整」
本当に気にするべきは、お客様が日常的に目にする場所、使用する場所が、期待値以上にきれいになっているかどうかです。
自分が気にする「見えない壁」の残りを追求するより、お客様の「納得」のラインを超えることにエネルギーを注ぎましょう。
2. 【心構えその二】「自分が気になる点」と「相手が気になる点」はズレて当たり前
クレーム対応に凹んでしまうのは、「完璧にしたはずなのに…」という落胆があるからです。
しかし、プロとお客様の「気になるポイント」は、構造的にズレていて当然なのです。
あなたが完璧に仕上げたはずの現場で、お客様から指摘があったことはありませんか?
その指摘が、プロ目線では「もう限界のはず」「そこまで気にしないだろう」という場所だったなら、それはまさにこの「ズレ」が原因です。
現場でありがちな「ズレ」の具体例
あなたが完璧に仕上げた換気扇の奥より、お客様は「玄関のドアノブが綺麗になったか」の方が気になるかもしれません。
クレームが来たとしても、それはあなたの技術や努力が足りないのではなく、「お客様が最も気にしていたポイント」が、あなたのチェックリストの優先順位からたまたま外れていただけだと捉えましょう。
「凹む」のではなく、「今回の最優先事項はここだったのか」という次の現場へのデータ収集だと切り替えることが、プロとしての冷静さを保つ秘訣です。
3. 【心構えその三】作業後の不安は「自分の仕事」として現場に置いてくる
作業を終えて帰宅した後も、「あそこは大丈夫だったかな」「もしかしたら言われるかも」と不安に苛まれることはありませんか?
しかし、作業後、その仕上がりに一番神経質になっているのは、間違いなくあなた自身です。
お客様は、あなたのチェックが終わった後、その空間で日常を再開します。
あなたが悩んでいるサッシの小さな水滴の跡は、もう他の家具や日常の風景に紛れて、彼らの意識から消えているでしょう。
神経質になりすぎることで失うもの
過度な不安は、あなたの時間とエネルギーを奪います。
- 作業後の不安 睡眠不足や休息不足
- 次の現場への集中力低下 新たなミスや効率の低下
プロとしての仕事は、現場を離れた時点でひとまず完了です。
もし指摘があれば、その時にプロとして冷静に対応すれば良い。
不安に苛まれる時間を、次の仕事の準備やリフレッシュに充てることで、結果としてパフォーマンスを上げることができます。
✨ プロとして差がつく!クレームが来てしまった時のワンポイント
「3つの心構え」で心の準備はできていても、実際にクレームの連絡が来ると動揺してしまうのは当然です。
しかし、この瞬間こそ、プロとしての真価が問われます。
クレーム対応を単なる「謝罪と手直し」で終わらせず、次の仕事へ活かすためのステップとして捉えましょう。
📌 対応のワンポイント:感情を入れず「事実」だけを聞き取る
お客様の指摘は、時に感情的な言葉を伴うことがあります。ここで感情的に反応したり、反論したりすると、事態は悪化する一方です。
- 【NG対応】「あそこは素材的に限界なんです」「前回のお客様は何も言いませんでした」
- 【OK対応】「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。具体的にどの部分が、どのような状態で気になるか教えていただけますか?」
クレームを「感情的な批判」ではなく、「現場の具体的な情報」として受け取りましょう。
- 「どの場所(例:洗面台の縁)」
- 「何が残っているか(例:水垢の跡、黒い微細な傷)」
この2点を冷静に聞き出し、メモを取ることで、あなたは「お客様が気にするポイントのデータ」を確実に手に入れたことになります。手直しが必要であれば、そのデータをもとに迅速かつ最小限のエネルギーで対応できます。
まとめ:プロの「線引き」が自分とお客様を守る
クレームで神経質になりすぎるあなたが持っていたい3つの心構えは以下の通りです。
- プロの神経質は「お客様には見えない壁」と心得よ
- 「自分が気になる点」と「相手が気になる点」はズレて当たり前
- 作業後の不安は「自分の仕事」として現場に置いてくる
あなたの真面目さは、質の高い仕事を生み出す原動力です。しかし、その真面目さでご自身を追い詰めないでください。
完璧を目指すのではなく、プロとして冷静に「線引き」をする勇気を持つこと。そして、万が一指摘があった時には、感情的にならず「情報」として受け取ること。
それこそが、長くこの仕事を続けていくための、最も重要なプロの視点なのです。
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