多くのハウスクリーニング業者が「厄介だ」と感じる天カセエアコンの分解洗浄。
その中でも、ホテルのロビーや通路でよく見かける三菱セゾンの2方向天カセは、実は分解難易度が比較的低いことをご存知でしょうか?

この記事は、長年現場で天カセ洗浄を経験してきたプロが、この三菱セゾン機(写真の機種)の分解・洗浄作業を詳細に解説する実践マニュアルです。
「モーター軸のファンは外すべきか?」
「固いドレンパンのネジを楽に外すコツは?」
といった、現場で直面する疑問に具体的にお答えします。
【この記事でわかること】
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この機種の分解難易度が低いとされる具体的な理由
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コネクタ、ドレンパン、本体カバーを外す確実な手順と養生の必須テクニック
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慣れないうちは外す必要がない「時短洗浄」の境界線
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復旧時に失敗しないためのネジ締め直しチェックポイント
経験豊富な作業者の方にはもちろん、天カセ洗浄に慣れていきたいという方にとって、この機種は格好の練習台となります。
ぜひ最後まで読んで、次の現場での作業効率向上にお役立てください。
1. なぜ簡単?三菱2方向天カセの分解難易度が低い理由
早速ですが、我々プロの視点から見て、この三菱セゾンの2方向天カセエアコンが他の機種に比べて作業しやすいと感じる、決定的な理由を2点お伝えします。
理由① ドレンパンのネジが「固着しにくい」
天カセ洗浄において、最も時間がかかり、体力を消耗するのがドレンパン(結露水を受ける皿)を外す作業です。
ドレンパンを固定しているネジは、長年の湿気や汚れで錆びつき、非常に固く締まっていることが多々あります。
ところが、この三菱機種の現場では、ドレンパン固定ネジが比較的スムーズに緩むケースが多く、固着によるトラブルが少ない印象です。
これは、作業時間の大幅な短縮につながる、大きなメリットです。
理由② 主要パーツの分解が「必須ではない」
通常、徹底的な洗浄を行う場合、モーター軸とファンを本体から分離する必要がありますが、この機種は、高い洗浄効果を保ちつつ、ファンを外さずに清掃を完結できる構造になっています。
モーター軸を外す作業は難易度が高く、復旧時のトラブルリスクも高まります。
ファンを外さずに済むことで、分解・復旧の時間が大幅に削減され、慣れない作業者の方でも安全かつ綺麗に仕上げることが可能です。
2. 【分解手順】カバー・ドレンの外し方と必須の養生テクニック
ここからは、実際の分解手順を追って解説します。
安全かつ確実に作業を進めるための「プロの注意点」を必ず守ってください。
ステップ 1:電源の遮断とブレーカー確認
まず、安全のためエアコン専用のブレーカーを必ず切ってください。
この機種はホテルのロビーなどに設置されていることが多いため、ブレーカーがフロントや事務室の目立たない場所にあることが多いです。
作業開始前に必ず確認・遮断しましょう。
ステップ 2:本体カバー(化粧パネル)の取り外しとコネクタ養生
この機種のカバーは2枚に分かれています。
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コネクタを抜く: 本体中央には、配電基盤とルーバー(風向きを変える羽)を繋ぐ黒い配線(コネクタ)があります。カバーを外す前に、このコネクタを慎重に抜いてください。
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【プロの注意点】 コネクタを抜いた後、本体側のメス端子を濡らさないように養生テープで確実に覆ってください。洗浄時の水しぶきが内部に入ると、故障の原因となります。
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ネジを緩める: カバーは複数のネジ(機種により6〜8個程度)で固定されています。これらを電動ドライバーで取り外します。
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【プロの推奨】 ネジの管理:紛失防止のため、本体カバー用、ドレンパン用など、種類ごとに100円ショップの小型プラスチックケースに分けて保管しましょう。
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外したカバーの裏側はカビで汚れているため、外で別途高圧洗浄を行います。養生したコネクタ部分に水が入らないように注意してください。

ステップ 3:ドレンパンの取り外し
ドレンパンは、ネジの他に大きな金具でも固定されています。
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ネジと金具を外す: ドレンパンを支えるネジと金具(合計8個程度)を全て外します。
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取り外し: ドレンパンは結露水や汚れが溜まっているため、重くなっています。同僚と二人で支えながら、ゆっくりと真下に引き抜いてください。
3. 【重要】モーターとファンは外すべきか?時短洗浄のコツ
分解後、ファン(送風ファン)がむき出しになります。
ファンは一見きれいに見えても、手で回転させると黒いカビのカスがパラパラと落ちてくることが多いです。

モーター軸を外さずに洗浄する
結論として、この三菱2方向天カセでは、モーター軸を本体から外す必要はありません。
ファンを外さなくても、適切な高圧洗浄機とテクニックを使えば、カビや汚れを完全に除去できます。

必須の養生:モーターへの浸水を防ぐ
ファンを外さない場合、最も重要なのがモーターの養生です。
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養生方法: 写真の赤丸で囲ったモーターの両サイドの軸部分を養生テープでしっかりと巻き付け、水しぶきがかからないように防御します。この部分への水の侵入は、エアコンの故障に直結します。
4. 【洗浄手順】汚水の養生と効率的な洗い方
分解と養生が完了したら、いよいよ洗浄作業に入ります。
ステップ 1:洗浄カバーの装着
汚水が床に垂れるのを防ぐため、エアコン専用の洗浄カバーを本体に装着します。

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装着のコツ: カバーは本体の枠にただ掛けるだけでなく、10cmほど上に押し込むように深く装着してください。浅いと洗浄中に跳ね返った汚水がカバーの外に飛び散る原因となります。
ステップ 2:洗剤の噴霧とつけ置き
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洗剤噴霧: 熱交換器(アルミフィン)とファン全体に洗剤(例:強アルカリ性洗剤など)を均一に噴霧します。
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つけ置き: 数分間放置し、洗剤を汚れにしっかり浸透させます。この待ち時間を利用して、外したパーツ(カバーやドレンパン)の洗浄を行いましょう。
ステップ 3:高圧洗浄のテクニック
いよいよ高圧洗浄機で水を噴霧し、汚れを洗い流します。
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水の流れと角度: ノズルをファンに向かって真っすぐに保ち、高い水圧でファンと熱交換器の奥の汚れを叩き出します。
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モーターを避ける: 角度を斜めにすると、せっかく養生したモーターに水しぶきが飛び散ります。水の向きとファンが回転する方向を常に意識し、モーターに水がかからないように細心の注意を払ってください。
高圧洗浄後は、中和剤やリンス剤を噴霧し、最後に清水でしっかりと洗い流して完了です。
排出される汚水が透明になるまで徹底的に洗浄してください。

5. 【復旧のコツ】ネジの再取り付けで失敗しないための注意点
分解よりも復旧の方が「楽」と感じる方もいますが、一つだけ注意すべき点があります。
ネジの空回りを防ぐための目視確認
ドレンパンやカバーなど重いパーツを支えながらネジを取り付ける際、ネジ穴の位置がズレていると、ネジがうまく締まらず空回りしてしまいます。
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失敗防止策: ネジを電動ドライバーで締める前に、必ずネジの先端がネジ穴にしっかり刺さっているかを目視で確認してください。
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ゆっくりと開始: 最初はゆっくりと手動で回すか、電動ドライバーの最低トルクで回し始め、スムーズに入り始めたらトルクを上げて締めるのが基本です。
この一連の作業を正確に行えば、分解が容易なこの機種は、短時間で非常に綺麗に仕上がります。
💡 まとめ:この機種で自信をつけ、作業を効率化する
この記事でご紹介した三菱2方向天カセエアコンの分解洗浄は、天カセ作業の経験を積みたい方にとって、非常に優れた教材となります。
最大のメリットは、ドレンパンのネジが固着しにくい傾向にあるため、分解の初期段階でつまずくリスクが少ない点です。
さらに、モーター軸のファンを外さずに高レベルの洗浄が可能な構造であるため、作業時間の大幅な短縮と、難易度の高い復旧作業をスキップできるという作業効率上の大きな利点があります。
ただし、難易度が低いとはいえ、プロの鉄則として守るべきはモーターと配電基盤への養生徹底です。水しぶきが内部に絶対に侵入しないよう、細心の注意を払うことが、確実な洗浄とエアコンの寿命を守る鍵となります。
この経験を活かし、安全かつ効率的な天カセ洗浄のスキルを身につけていきましょう。
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