「ハウスクリーニングの仕事は、体がキツい割に単価が安すぎる」「このまま続けても将来がないのでは?」
今、あなたがそう感じているなら、その苦悩は痛いほど理解できます。
なぜなら、30年以上にわたり、私が毎日感じてきたことだからです。
「もう辞めたい」と何度も思いながらも、なんだかんだで今日まで続けてこられたのには、理由があります。
それは、「キツさや安さに心を支配されない」ための、独自の仕事哲学と継続の秘訣を身につけたからです。
本記事では、30年の経験を経て私が辿り着いた、ハウスクリーニングの仕事を「苦痛」から「楽しい」に変えるための【継続の3秘訣】を具体的に解説します。
単価を気にせず、プロとして長く働き続けるための具体的なヒントを、ぜひ掴んでください。
1. 誰もが通る道:私がハウスクリーニングを始めた「キツい」修行時代
今でこそ「30年続いた」と言えますが、当然ながら私も最初は戸惑いだらけでした。
30年以上前、22歳の頃にアルバイトからこの世界に入ったのが始まりです。
当時の時給は1,000円。
ネームバリューのあるフランチャイズ店で、軽い気持ちで面接に行ったところ、すぐに雇ってもらえることになりました。
しかし、いざ仕事を始めてみると、待っていたのは「とにかく急げ、急げ!」という指導です。
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どうすれば早く終えられるか。
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いかに時間を短縮できるか。
雇用者側からすれば、人件費がかかっているため当然の要求です。
ですが、初めてこの世界を知った当時の私にとって、言われるがままにしか動けない状況は全然楽しくありませんでした。
「ゆっくり作業されても困る」という雇用者側の論理と、「綺麗に仕上げたい」という自分の思いが食い違い、仕事はどんどん辛くなっていったのです。
✅ 仕事が「楽しい」に変わる分かれ目:修行の「ゴール」を設定する
ここで多くの人が挫折し、「ハウスクリーニングはきつい、割に合わない」と辞めていきます。
しかし、仕事が「苦痛」でなくなるのは、言われた通りに動く時期を卒業してからです。
逆に言えば、「こうすれば、より早く、より綺麗にできた」という自分なりの創意工夫が積み重なった瞬間から、仕事は一気に楽しくなります。
お客様はお金を出して、素人には真似できないプロの仕上がりを求めているからです。
この「プロ」として認められるまでは、我慢と忍耐の時期、いわば「修行」が絶対に必要です。
私の経験から見て、キッチン、風呂場、ベランダガラス、フローリングワックスがけなど、一通りの作業方法を経験するには半年ほどが目安でしょう。
この期間を乗り越え、会社から「この現場は君に任せる」と一人で作業を完結できるスキルが身につけば、仕事は格段に楽しくなります。
ポイント: 最初は時間がかかっても構いません。焦る必要はありませんが、半年を目安に、誰からもとやかく言われないクオリティで一軒の現場を任せてもらえるようになるまで、「プロ意識の土台作り」に集中して耐えましょう。
2. 【継続の秘訣・その1】お金に縛られない!「単価の安さ」を乗り越える思考法
「技術が身についても、結局、ハウスクリーニングは単価が安い」――この問題は、長く続ける上で最大の壁になります。
ハウスクリーニングは突き詰めて言えば「家のお掃除」であり、「普通誰でもできること」という認識から、専門性が評価されにくいのが現実です。
さらに業者が多く、価格競争が横行しているため、単価が上がりにくいのはこの業界の宿命と言えます。
プロだからこそ、素人と比べて作業速度も仕上がり品質も大きな差が出ますが、それをなかなか理解していただけないところは、割り切るしかありません。
❌ やってはいけないこと:お金のことばかり考えて比較する
私が30年続けてきて断言できるのは、「仕事の値段や時給のことばかり考えていると、必ず仕事がアホらしくなり、遅かれ早かれ辞めていく」ということです。
他の仕事と時給を比較したり、「この労力でこの値段か…」と採算ばかりを考えていると、仕事が苦痛でしかなくなります。
交渉して単価を上げるのも現実的には難しいため、ここは一旦、「値段のことは考えない」という思考に切り替えましょう。
✅ プロの戦略:間接的な「採算合わせ」と「高付加価値」
単価の安さに心を支配されないためには、以下の2つの方法で「採算」を間接的に合わせるのが賢明です。
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「楽な現場」と「キツい現場」でバランスを取る(精神的な採算合わせ)
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しょっちゅうキツい現場ばかりではありません。比較的楽に終えられる現場や、割りのいいスポット的な仕事がある時こそ、楽をさせてもらいましょう。
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キツい現場で消耗した心身を、割りのいい現場で回復させる。こうして全体のモチベーションと採算を平均で見てバランスを取ることで、長く続けやすくなります。
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お客様に「値段以上の価値」を感じてもらう
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単価が安いと感じるなら、素人では不可能な「仕上がりのクオリティ」で勝負するしかありません。
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特に、技術が難しいため他社が断るような、特定の高付加価値なサービス(例:高度なワックス剥離、諦められていた経年汚れの除去)を極めれば、「あの人に頼むしかない」という立場になり、結果的に単価も安定します。
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継続の秘訣・その1: 「仕事単価」という外的な要素ではなく、「プロとしての満足感」という内的な要素に目を向けましょう。
3. 【継続の秘訣・その2】時短より信頼を優先!クオリティがもたらす「精神的・金銭的メリット」
修行時代には「急げ」と指導されますが、長く楽しく続けるためには、仕事の速度を最優先にするのは賢明ではありません。
急ぎすぎると作業が雑になり、最悪の場合クレームにつながります。
クレーム対応で時間を取られ、精神的にも疲弊するくらいなら、最初からクオリティを重視する方が、結果的に「得」なのです。
✅ クオリティ重視が「時短」につながる真の理由
時短を意識すること自体は大事ですが、プロとして仕事を楽しむ秘訣は、多少時間がかかっても「仕上がりのクオリティ」を重視することです。
なぜなら、最高のクオリティは以下の大きなメリットをもたらすからです。
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お客様からの感謝と自信(精神的メリット): 作業終了後、「うわ〜、本当に綺麗になったね」と直接言ってもらえる喜びは、何物にも代えがたい「報酬」です。これが、仕事を続けていくための強固な自信と、次の仕事への活力になります。
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クレームの予防(間接的な時短): 丁寧な仕事は、後の手直しやクレーム対応の時間を丸ごとカットします。これは、急いだ結果のミスをカバーする時間よりも、はるかに大きな時短効果があります。
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リピートと紹介(金銭的メリット): クオリティに満足したお客様は、リピーターになり、さらに別のお客様を紹介してくれます。新規顧客獲得に費やす広告費や営業労力を減らせるため、間接的に採算が合ってくるのです。
継続の秘訣・その2: 時短のために手を抜くのではなく、クオリティを高めることで信頼を獲得し、間接的なメリットを享受するサイクルを作りましょう。
4. 【継続の秘訣・その3】心と体を守る働き方:無理をしない「持続可能なスケジュール術」
ハウスクリーニングの仕事を「苦痛」に変えてしまう最大の原因の一つが、「無理なスケジュール」です。
特に、採算を合わせようと「無理に1日で終わらせる」ことに固執すると、心身を壊し、結果的に「もう辞めたい」という感情につながります。
私の仕事は賃貸マンションの1DKや2DKが多く、慣れた作業員なら朝8時に始めて夕方5時には終えられるのが理想です。
しかし、キッチンが油まみれだったり、タバコのヤニがひどい部屋のクリーニングは、ぶっ続けで動いても夕方までに終わらないことが頻繁にあります。
❌ 危険信号:「ぶっ続けで終わらせる」の実態
採算を合わせるため、何度か無理をして1日で終わらせた経験があります。
その時の実感は、まさしく「ハウスクリーニングってすごくキツい!こんなのやってられない!」というものでした。
その日なんとか終わらせたとしても、帰宅後に疲れがどっと押し寄せ、翌日まで疲労を引きずります。
一生懸命体を動かして時間を浮かせても、その浮いた時間がしんどさで何も有効活用できなければ、かえって損です。
✅ プロのスケジュール術:「採算」より「気分」を優先する
仕事を楽しく続け、30年間継続できた秘訣は、採算よりも自分の体力とモチベーションを優先することにありました。
この現場は頑張っても1日では無理だと判断したら、「二日かけるか、応援を呼ぶか」という選択を躊躇しないことです。
確かに、日当や時間給に換算すれば、二日かけた方が金銭的には安くなるかもしれません。
しかし、気分的に楽になり、次の仕事への活力が維持できるのであれば、それは十分に許容できる「投資」です。
しょっちゅう無理な現場ばかりではないのですから、平均でバランスが取れれば問題ありません。
継続の秘訣・その3: 「今日はよくやった!」と自分を褒める瞬間を大切にしましょう。途中経過で自分が綺麗にできたところを眺めて満足に浸る時間や、翌日に持ち越してでも体力を温存することが、長く続けるための「持続可能なスケジュール術」です。
5. 心の負担を減らす:クレーム対応は「プロとしての成長の糧」
ハウスクリーニングを辞めたくなるもう一つの大きな不安要素が、クレームです。
「文句を言われたらどうしよう」「トラブルになったら厄介だ」という不安は、仕事を苦痛に変えます。しかし、30年の経験から言えるのは、「クレームを恐れる必要はない」ということです。
✅ クレーム対応は「スキルアップ」のチャンス
ビジネスをする以上、お客様から不満やクレームを言われることは絶対に避けられません。その上で、重要なのは以下の考え方です。
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過度に気にしない: 多少の失敗や落ち度は誰にでもあります。それを過度に気に病む必要はありません。プロとして快く対応し、改善に努めれば良いのです。
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余分な労力を惜しまない: クレーム対応で余分の労力をかけて相手の不満を満たしてあげると、お客様の態度が変わることもあります。その経験は、あなたの**「クレーム対応スキル」**という見えない財産になります。
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縁を切る勇気を持つ: どんなにつくしても、理不尽な要求を繰り返す、どうしようもない相手は存在します。(特に自営業の場合)その時は、多少金銭的に損をしても、スパッと縁を切る方が精神衛生上は賢明です。
クレーム対応は、あなたの仕事の質を見直し、対応力を上げるための成長の糧です。 不安に潰されず、「また一つ、厄介な事例を乗り越えたぞ」と楽しむくらいの心持ちでいきましょう。
🎁 【特別公開】プロが実践する「作業範囲の線引き」戦略
「継続の秘訣・その2」でクオリティの重要性を述べましたが、プロとして長く続けるためには、「どこまでやるか」の線引きが非常に重要になります。
特に難度の高い汚れに対し、無理に時間をかけてサービス残業状態になっては、継続は不可能です。
私が30年の間に確立した、心身を消耗させずにプロ意識を保つための「線引き戦略」をご紹介します。
1. 浴室のウロコ・水垢に対するプロの姿勢
浴室の鏡や石材壁にこびりついたウロコ(水垢)は、時間が経つとシリカ成分などが固着し、通常の洗剤では歯が立ちません。
多くの業者が「完璧に落としたい」と無理をして、研磨剤やポリッシャーを使い、結果的に素材を傷つけたり、時間ばかり消費して採算を崩しがちです。
私の戦略は、お客様や担当者に正直に**「プロとしての限界」**を伝えることです。
この戦略の核は、「取れないものは取れないと正直に言い、余計な労力をかけない」ことです。
自分の技術を過信せず、プロとしての見極め能力を発揮することが、30年続けるための賢いリスクヘッジなのです。
2. 「傷みすぎた素材」への向き合い方
汚れが落ちても、経年劣化で素材そのものが傷んでいる場合があります(例:古い化粧板の剥離など)。
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絶対に触らない線引き: 触ることで剥がれてしまいそうな素材、水に弱い木製部分などは、**「清掃不可」**と担当者に伝えます。
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判断基準: 「無理に清掃して、後で交換費用を請求されるリスク」と「清掃を諦めて信頼を失うリスク」を天秤にかけたとき、前者の方がリスクが高すぎます。傷をつけてしまうと、あなたの信用を失うだけでなく、金銭的な損失にもつながるからです。
プロの線引き戦略は、自分の「時間」と「信用」を守る、最も重要な継続の秘訣です。
💎 まとめ:ハウスクリーニングを「生涯の仕事」に変える【継続の3秘訣】
長年この仕事をしていると、「キツい」「安い」など、様々な不満を感じることがあるでしょう。
しかし、せっかく身につけたスキルを捨てて新しいことをゼロから始めるのは、大きな労力です。
この仕事を「生涯の仕事」に変えるため、もう一度、30年の経験から導き出した継続の秘訣を胸に刻みましょう。
この仕事で成功し、長く働き続けるには、卓越した技術だけでなく、心身の消耗を抑え、仕事の価値を自ら見出す「プロの仕事価値観」が不可欠です。
AIがいくら進化しても、ハウスクリーニングは人間の手と、あなたの培ってきた技術と経験が不可欠な仕事です。
これらの秘訣が、あなたがハウスクリーニングの仕事を「苦痛」から「楽しい」に変え、長く働き続けるための道しるべとなれば幸いです。
私たちプロフェッショナルとして、お互い頑張っていきましょう。
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